Wedge SPECIAL REPORT

2021年12月29日

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大澤 淳 (おおさわ・じゅん)

中曽根康弘世界平和研究所主任研究員

慶應義塾大学法学部卒業、同大学院修士課程修了。専門は国際政治学(戦略評価、サイバー安全保障)。外務省政策調査員、米ブルッキングス研究所客員研究員、内閣官房国家安全保障局参事官補佐、同局シニアフェローを経て現職。

「Wedge」2021年12月号に掲載され、好評を博した特集「日常から国家まで 今日はあなたが狙われる」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。

 台湾や朝鮮半島など日本の周辺地域で、安全保障環境が急速に悪化している。

 台湾有事や朝鮮半島有事が起きれば、戦闘機はもとより、ミサイルが飛び交うことも想像に難くない。しかし、実際の危機は、こうした目に見える兵器が登場する以前の平時・グレーゾーンにおける「サイバー空間」から始まる。そこに「宣戦布告」はない。これが現代の戦いを象徴する〝ハイブリッド戦争〟であり、平時から静かに忍び寄ってくるのである。

 ハイブリッド戦争が注目されたのは、2014年のクリミア危機において、ロシアがウクライナ領・クリミア半島の無血占領に成功したのがきっかけであった。クリミア危機の最中には、インターネットや携帯・固定電話の遮断をはじめ、電磁波によるウクライナ軍の通信遮断、政府ウェブサイトのダウンなどといったサイバー攻撃が発生した。加えて、ロシアはロシア語メディアやSNS上で「民族主義者による虐殺でクリミアのロシア人に危機が迫っている」などというフェイクニュースの拡散などの手段を用いて「情報戦・心理戦」も並行して行っていた。

 下図は、平時から有事にかけてのハイブリッド戦争の様相を図式化したものだ。重視されていることは二つある。一つは有事に兵器によって敵の軍事目標を破壊する以上に、平時からの情報戦で相手社会の団結や意思決定を混乱させることである。もう一つは、グレーゾーン以降、サイバー戦で通信など重要インフラの麻痺を起こし、相手の継戦意思を失わせることである。

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