2022年10月6日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月20日

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 10万近くと見られるロシア軍がウクライナ国境に集結していると11月初めに報じられ、緊張が高まっている。

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 プーチンは7月に「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題する長文の論文を発表したが、「ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップにおいてのみ可能であると確信している」と書き、国家としてのウクライナの存立がモスクワの同意に係わっているように述べた。メドヴェージェフ安全保障会議副議長(元大統領)は、キエフに「正気」の指導者が現れるのを待つと言い、「そのような指導者でなければ相手にする価値はない」としたが、キエフにクレムリンの傀儡を据えるという見え透いた脅迫であろう。

 要するに、プーチンには始末をつける仕事がウクライナに残されているということである。しかし、ウクライナ国境近くに10万近くの兵を集結させているプーチンの狙いとなると判然とはしない。

 ウクライナの副国防相はこの冬にもロシアによるウクライナの不安定化の可能性が高いと述べている。バイデン政権も相当の危機感を抱いていると察せられる。4月にも同様の兵力集中の動きが見られたが(この時は何事もなく過ぎた)、今回は当時に比較して部隊の動きなどが見えにくく、分析の手掛かりが少ないという指摘もある。

 12月7日にオンライン形式で開催された米露首脳会談において、バイデンはプーチンにロシアのウクライナ侵攻の場合の対抗措置を伝達したが、大統領補佐官サリバンの記者会見における説明によれば、それは米国と欧州の同盟国による「強い経済措置」、ウクライナに対する追加的な防衛装備の提供、およびバルト三国や東欧諸国を対象に「追加的な能力(註:装備と部隊の展開の意)をもって北大西洋条約機構(NATO)同盟国の東の側面の防備を固める」ことである。ウクライナへの派兵は排除されている。

 経済制裁については、サリバンはその内容に立ち入ることを避け、2014年のクリミア奪取の際には講じなかった措置を発動する用意があることを明確に伝えたこと、欧州の同盟国とも調整を進めていることのみを述べたが、国際的な支払いシステムSWIFTからの遮断、あるいはドル取引からの排除など、ロシア経済全般を標的にした措置が想定されているであろう。サリバンは、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン、ノルド・ストリーム2についても言葉を濁しているが、その凍結は米国として重視しているとの言いぶりである。もし、このような経済制裁が現実となれば、ロシア経済は甚大な損害を被るであろう。

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