(出所)筆者作成
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未利用材チップ価格はいくらなのか。その相場観は市場拡大によって徐々に醸成されるだろうが、調達委による査定には構造上の限界が残る。会津の例では、チップ業者(ノーリン)が、発電事業主体(グリーン発電会津)の親会社だが、このような場合、未利用材チップ価格を査定するのは困難である。なぜなら、チップの販売価格を、実際のコストから上げ下げしても、その差分を親会社に実質的に移管することができるからだ。つまり、チップ価格を実際よりも高く申請しても、親会社がその利益の大部分を吸収することによって、発電主体が大きな利益を出していないように見せかけることができる。こうすれば、調達委査定を受けても、買取価格を高止まりさせることができてしまう。
調達委は、今後、チップ購入価格も含むデータの供出を求めているが、書類上のチップ購入価格が、実際のコストを反映している保証はない。構造上の限界である。
しかも、これは会津に限った話ではない。バイオマスは発電コストの6割超が燃料費であるため(前述)、発電事業にチップ業者が参画することで、燃料調達リスクが軽減される。林野庁も、チップ業者や素材生産事業者など上流部門が発電事業に参画することを、林業や地域振興が結びつくモデルとして推奨している。
第3の問題は、調達委は言い値を今後も査定できる保証がなく、しかもそれはバイオマス発電に限らないということだ。
(出所)調達価格等算定委員会資料より筆者作成
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例えば未利用材チップによるバイオマス発電の買取価格は、事業者の言い値である32円/kWHに決まった。しかし、調達委に事業者が提出した資料をもとに、再現を試みると30円と推計された。これは事業者が廃炉費用の計上時期を間違ったこと等によるが、調達委や事務局から修正の指摘はなかった。公開審議で希望価格を提示した事業者について、エクセルシートを公開すべきだろう(こちらの記事で、再現結果を解説しているので興味ある読者はご覧頂きたい)。
他の電源の買取価格も、ほぼ言い値がついている上表)。しかし、なぜ言い値が採用されたのか、稼働率等の基本的な計算諸元が整理されておらず、再現が困難である。例えば、調達委は、業界提出の建設単価円/kWの多くを切り下げているにも拘わらず(表の肌色部分)、同委が最終決定した買取価格は業界希望の言い値が変わらなかった(表の薄緑色部分)。