2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2013年1月29日

我々の給与は増えるのか

図3  消費者物価指数と平均給与の推移
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 給与の下落が止まらない。1997から既に10%以上下落している。この間消費者物価も下落しているが、図‐3のように給与の下落幅のほうが大きく、実質的に給与が減っている。住宅ローンを抱えている家庭は大変だ。

 給与の減少の理由を、企業が収益を確保するために人件費を削減しているからとする説があるが、正しくない。図‐4は労働分配率の推移を示したグラフだ。国民所得に対する雇用者報酬の比率だ。高止まりしたままだ。要は企業の儲けが減少しているために、人件費もそれに応じて減少している。

図4 労働分配率の推移
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 法人企業統計によると1997年度の全産業の付加価値額は276兆円、人件費は203兆円だった。10年度の付加価値額は272兆円、人件費は195兆円だ。成長ではなく、ともに減少している。給与が増えなければ消費は増えない。給与が増えるためには企業の業績が改善する必要があることは、労働分配率からもはっきりしている。インフレ期待だけでは、家庭の消費が大きく増えることはなさそうだ。

 日本の産業がインフレ期待の下でどのような実績を上げることができるのかが我々の給与上昇の鍵だが、それには安定的なエネルギー・電力供給が大前提になる。供給の先行きが不透明ななかでは、企業は投資を控え海外立地の検討を行うだろう。付加価値額、我々の給与も下落を続ける。インフレターゲットが物価だけに効き、給与には効かない最悪の結果になりかねない。

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