2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2013年1月29日

 無論、全ての経済学者がデフレ脱却のための政策について意見が一致しているわけではない。吉川洋東京大学大学院教授は、デフレが続くなかで「インフレ目標」を打ち出し、金融緩和を続ければインフレになると単純には考えられないとし、クルーグマン教授の理論を批判している。吉川教授は政策が無効になる「不確実性の罠」に日本経済が陥ったことが問題と指摘している。

「エネルギー供給の罠」に陥る可能性

 「流動性の罠」にせよ「不確実性の罠」にせよ、デフレから脱却するためには経済を活性化させることが必須だ。十分なエネルギー・電力供給はそのための条件の一つだ。

 GDPを作りだすのは企業などの生産物が創り出す付加価値額だ。その付加価値額が働いている人、投資家、企業などに分配され、分配されたお金は消費にまわり、投資に使われる。経済学ではGDPの三面等価と呼ばれる、生産=分配=支出の関係だ。GDPが増えるためには、消費などの需要が増え、生産が増え、分配が増えなければならない。

図1 産業部門のGDPとエネルギー消費
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 十分なエネルギー供給がなければ、エネルギー効率の改善がない限り、生産に齟齬をきたし分配も消費も増えない。エネルギーと生産の関係を具体的にみてみよう。図‐1は1973年のオイルショック以降の産業部門のGDPと一次エネルギー消費の関係を示している。

 第1次オイルショックが起こり石油の価格が一挙に数倍になった1973年から1990年にかけ産業部門の名目GDPは3.8倍になったが、同部門のエネルギー消費は4%減少している。石油ショック以降産業界が大きなエネルギー効率の改善を行った結果だ。しかし、1990年代からエネルギー効率の改善が頭打ちになっている。名目GDPの伸びはなくなったが、エネルギー効率の改善もなくなっている。

 この理由の一つは、日本の一次エネルギー消費の40%強を占める製造業で設備の更新と新設が減少しているためだ。設備が更新されればエネルギー効率が大きく改善された製造装置などが設置されるが、設備更新がなければ、エネルギー効率の大きな改善は難しい。


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