2026年5月27日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月27日

 2026年5月4日付Foreign Policyで、ミドル・パワーが集団的行動を取ったとしても世界の秩序を築くことにはならないとラジャ・モハンが指摘している。

(GBlakeley/gettyimages)

 混沌とした国際情勢を前に、ミドル・パワーが集団的行動を取ることに期待が高まっている。しかし、現場の状況からは、それが有効なものになるとは思い難い。ミドル・パワーは、相互協力を強化することで、大国との繋がりに伴うリスクを軽減することはできても、米中両国が支配する世界秩序に大きな影響を与えるには限界がある。

 ミドル・パワーに関心が寄せられているのは、カナダのカーニー首相が本年1月にダボス会議で行った演説がきっかけだった。カーニーが訴えた大国との断絶はミドル・パワーの連帯に繋がらなかった。

 米国がイランを攻撃した際、カーニーはこれを非難することを拒み、批判の矛先をイランの核拡散に向けた。ドイツのメルツ首相も同様の立場を述べたが、欧州の多くの国はトランプの戦争を不法なものと呼び、支持することを拒否した。この戦争が示したことは、ミドル・パワーの連帯ではなく、分裂であった。

 ミドル・パワーと言っても、これら諸国は、共通の敵、脅威認識、あり得るべき秩序構想を共有しているわけではない。ミドル・パワーが役割を果たすのは、覇権国が広範な国際秩序を維持している際に、その安定と規範の遵守に貢献するという状況においてである。大国が国際秩序の修繕が必要と考えている際、ミドル・パワーの国にできることは限られ、自らの利益を守ることしかできない。

 今回、イランとの仲介に顕著に関与しているエジプト、パキスタン、トルコ、サウジアラビアは、同時に、昨年末にガザの和平プロセスでトランプに手を差し伸べた。イランにおける和平努力の方向性は、米国を助けることを目指している。ミドル・パワーの国々は、米国の単独主義に多国間の装いを提供している。

 軍事力が果たす役割を考えなければならない。現在の危機が表しているのは、単極構造が根強く維持されていることである。米国とイスラエルのイラン攻撃は、どのようなミドル・パワー連合も阻止できないやり方で、湾岸地域の戦略的状況を再構築した。

 豪州、日本、韓国等は、インド太平洋地域におけるミドル・パワーの代表格だが、中国からの脅威にさらされる中、安全保障面で米国に深く依存し、米国から離れるより米国に近づこうとしている。インドは、規模の面でも、意欲の面でも単一の極となろうとしているが、ヒマラヤにおいて中国との国境紛争がある。インドにとって、中国を世界秩序の共同の設計者と捉えるミドル・パワーの枠組みは避けるべき罠に他ならない。


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