2022年7月1日(金)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年1月21日

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山崎文明 (やまさき・ふみあき)

情報安全保障研究所首席研究員

明治大学サイバー研究所客員研究員。元会津大学特任教授。1978年、神戸大学海事科学部卒業。損害保険会社を経て大手外資系会計監査法人でシステム監査に長年従事。システム監査、情報セキュリティー、個人情報保護に関する専門家として、政府関連委員会委員を歴任。

バスや宅配便の運行情報も重要データの対象

 中国政府が昨年3月に米テスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地への乗り入れを禁止したのと同様に、中国政府がGPS情報によるヒートマップや車載カメラの撮影情報など、自動車データが収集されることを警戒していることがわかる。ちなみに中国では、02年以降、中国人民共和国測量法が施行されたことで、中国本土における個人の測量や地図作成は非合法化されており、05年には、新疆ウイグル自治区の空港や水道施設、高速道路の位置情報を集めたとして日本人の学者2人が罰金に処せられている。

 このほか重要データとしては、「車両流量、運送情報など経済進行状況を反映するデータ」や「自動車充電ネットワークの運行データ」、「認証やナンバープレートなどに関する情報を含む車外動画、画像データ」、「個人情報の主体が 10 万人以上におよぶ個人情報」、「国家インターネット情報部門と国務院発展改革、工業および情報化、公安、交通運輸に関連する部門が明確にする国家安全、公共利益または個人・組織の適法な利益に影響をおよぼす可能性のあるその他のデータ」が挙げられている。

 「車両流量、運送情報など経済進行状況を反映するデータ」は、例えば、路線バスの運行情報、特に遅延情報はその都市の経済の活性化状況がわかるし、宅配便の運行情報からはGDPの推計もできるはずだ。

日本も自動車データ管理法の制定を急げ

 ことほど左様に自動車データの重要性を理解し、中国国外へのデータの持ち出しを禁止しておきながら、海外へはEV自動車の輸出大国を目指す中国は、その先に自動車データを掌握し、その国を属国化する野望も見てとれるのは、私だけだろうか。

 ビックデータの解析が重要だと言われて久しいが、サイバーセキュリティの脅威やビックデータの重要性に大半の日本人は気づいていない。中国に倣って、日本も自動車データの国内処理や国内蔵置の義務づけを図るべきだ。一刻も早く、自動車データについて、経済安全保障の観点から議論が高まることを期待する。

 
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