2024年12月4日(水)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年1月21日

 日本への中国製EVの進出がますます進む中、自動車データの重要性については無関心な日本人。日本が丸裸にされないうちに自動車データ管理法の制定が急がれる。

圧倒的な価格を武器に日本への導入を進める中国・BYDの電気バス(ロイター/アフロ)

 日本への中国製電気自動車(EV)の浸透が止まらない。

 昨年暮れ、衝撃的なニュースが流れた。京阪バスが京都市内を走る路線で、中国の自動車メーカー比亜迪(BYD)製電気バス4台の運行を始めたのだ。運行には関西電力も参加している。

 京阪バスが中国製電気バスの採用を決めたのは、圧倒的な価格差である。国産の電気バスが約7000万円と高額なのに対し、BYD製は、約1950万円で、全く勝負にならない。BYDは2030年までに4000台の電気バスを日本で販売する計画だという。

低価格を武器に日本市場に攻め入る中国製EV

 中国製EVは路線バスだけではない。物流大手の佐川急便は配送用車両として、中国の広西汽車集団が生産するEVトラック7200台の導入を予定している。また、「即日配送」で急成長したSBSホールディングスでは今後5年間で、自社の車両2000台を東風汽車集団のEVトラックに置き換える予定だという。

 中国製EVの日本市場への浸透は、商用車に限ったことではない。上汽通用五菱汽車(ウーリン)が生産する小型EV「宏光(ホンガン)MINI EV」の低価格を武器に日本進出を狙っている。日産と三菱自動車が今年投入を計画している新型軽EVが政府の補助金を使っても200万円前後なのに対して2万8800元(約46万円)と破格の安さを売りにしている。

 こちらのモーターは日本電産製であることから日本進出してきた場合、安全装置を付加するなど日本の安全基準に適合させるため改良が必要だが、そこそこ売れる可能性もあるのではないか。いずれにせよ圧倒的な低価格は、国産自動車メーカーにとって驚異となることは間違いないと思われるが、圧倒的な低価格を実現している背景には、中国政府の戦略であることを忘れてはならない。

 中国政府はEVを国の基幹産業にすることを国策としており、バッテリーメーカーやEV自動車メーカーへ投資するとともに世界シェアを上げるために、助成金も出している。一方、中国は世界貿易機関(WTO)に01年12月に正式加盟しているが、加盟後20年もの歳月が経っているものの、助成金の総額は公表していない。

中国が矢継ぎ早に施行した自動車データ安全管理法とは

 中国政府がEVで市場を制覇する目的は、単に物量としての制覇だけではない。自動車が生み出すデータを掌握することの重要性を十分、認識しているからだ。


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