2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2013年1月30日

 演出家が使ってみたい女優なのである。彼らは次々に上戸に新しい挑戦の機会を与えている。美少女の面影を残す彼女もいつか30代を目前にしている。演出家からみれば、女優としての上戸が脱皮して新たな相貌をみせる瞬間をみたいのであろう。

 「いつか陽のあたる場所で」は、上戸が、友人である飯島や周囲の人々とのふれあいのなかで、人間として成長していくドラマでもある。

 休日の飯島と動物園に遊びに行った上戸は、そこで大学のゼミの友人とその息子に出会う。彼女の袖口からみえた、家庭内暴力による傷を飯島は見逃さない。

 飯島と上戸はその息子を預かることになる。友人が夫と食事にでかけるためだ。

 どしゃぶりの雨のなかを友人が、上戸の家に子どもを連れ戻しにやってくる。

 その直前に、上戸は自宅から宅急便で送られてきた自分のぬいぐるみについて、その子に説明する。

 「わたしはね、習い事も下手だったし。お母さんにほめられたことがなくて。いつもこのぬいぐるみに話していたんだよ。でもね、やっぱり、直接話さないとだめだよ」と。

 顔と洋服に明らかに新たな暴力の跡をとどめた友人が、どしゃぶりのなかを逃げるように立ち去ろうとしたとき、子どもが泣き叫ぶように呼びかける。

 「おかあさん、笑ってよ。僕は笑っているおかあさんが好きなんだ」

 女優・上戸の成長ぶりを観るのが楽しみである。

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