2024年5月7日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年2月8日

 この種の議論は、従来、誰もが感じていながらも、あまり口には出さないものでした。イーグレンの意図は、保守派の立場から、米国の影響力低下に、真正面から警鐘を鳴らすことでしょう。

 ただ、確かに、「二正面作戦能力喪失」が発するメッセージは深刻ですが、それでは、従来も米国は本当に「二正面作戦」を戦えたのかと問われれば、必ずしも「イエス」とは言いきれません。米国の戦闘能力の低下は、早くも1991年の湾岸戦争以降、現実のものとなっています。現状は、そうした長期的傾向が続いているに過ぎないとも見ることができます。そして、軍事戦略が国防予算に先立つのではなく、国防予算の範囲内で軍事戦略を作っていかざるを得ないということは、古今東西変わらない一面の真理には違いありません。

 そうであれば、米国の軍事費削減に一喜一憂するよりは、幸い、アジア太平洋機軸の方針は大筋では変わらないようですから、今後も米国がこの方針を維持するよう、日本も必要なことをやるしかないという結論になります。すなわち、既に決まっている防衛費増額をさらに拡大し、集団的自衛権の行使については、迅速に具体的な議論に踏み込む必要があります。二期目のオバマ政権は、左派色を鮮明にしつつあるようですから、米国内のアジア回帰派を勇気づけ、アジア重視政策を継続させるには、日本をはじめ、米国のアジアにおける同盟国・友好国は、今まで以上の努力が求められることになるでしょう。

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