2024年12月25日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年2月8日

 マクロンが主張する移民対策の強化と自律的安全保障については、前者は、移民が最初に入国する国の責任を巡り、また、後者は、ロシアの脅威を巡ってEU諸国の分裂を招く恐れがある。他方で、コロナ対策や経済面での中国や米国に対する自律性を維持する上でEUの連帯や強化の必要性についてはEU諸国内で意見が一致しつつあるように思える。

国内世論を見てもEU政策がカギ

 マクロンは独断的であり他の加盟国がついてこないのではとの見方もあるが、イタリアのドラギ首相とは盟友関係が構築されており、ドイツの新首相には前任者のような存在感は無く、EUによるコロナ対策などでEUへの支持率が高まる加盟諸国内の傾向も考慮すれば、マクロンは、移民・難民流入の前線国やロシアの脅威を直接感じている東欧諸国等を強引に押し切る可能性もあろう。

 最近のフランスの世論調査では、コロナ抑制の失敗にも拘らず、マクロンへの支持率は25%と安定しており、他方、一時マクロンに迫った中道右派のペクレスは失速気味で、極右のルペンが盛り返し2位に返り咲いている。また、決戦投票では、いずれが相手であってもマクロン勝利との結果も出てきており、EUの強化を通じてフランスを前進させるとのマクロンの主張が浸透しているのかもしれない。

 フランス国内でEU支持が高まれば、マクロンがより優勢となり、逆に議長国としての公約が実現できないようなことになれば、マクロンへの信頼も揺らぐので、EU政策が選挙の鍵となるのは間違いないであろう。もっとも、野党候補者にとっては、国内政治上マクロンを攻撃する論点を選挙戦の焦点とすることができるかがもう一つの鍵であろう。

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