2022年9月30日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年2月7日

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 バイデン大統領は1月19日の記者会見で、ロシアがウクライナに「小規模な侵攻」をした場合、米国と同盟国はどれ程の懲罰をするかについて口にした。さらに、欧州の同盟国が何をするかしないかで喧嘩をしている、とも述べた。バイデンの発言は、拙劣だったと言うほかない。

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 1月20日付のワシントン・ポスト紙社説‘Biden’s misstep on Ukraine was telling the truth’は、バイデンの発言、さらに、ドイツによる抵抗やマクロンの対ロ独自対話の必要論を批判している。1月21日付フィナンシャル・タイムズ紙社説‘Western unity is key to confronting the Kremlin’も、バイデンとマクロンの散漫な発言はプーチンの手を強めると批判する。

 バイデンの発言は、事態を誘導しようとしたのかもしれないが、軽率、危険なものだった。プーチンに小規模な侵攻であれば処罰を逃れられるとの誤ったシグナルを送るとともに、プーチンに西側分裂の弱点を見せるものとなった。

 バイデンは、失言癖を心配されてきたが、喋り過ぎにも注意すべきだろう。指導者には一定の凄みと迫力が必要であり、寡黙がそれを助けることもある。

 発足から1年経ち、バイデン政権に対する失望論が広がっている。懸念される。安保・外交について大統領、国務長官、国防長官の3人が重厚、強力なチームを作るべきではないか。バイデンの外交は余りに慎重で、平凡過ぎる。そして、戦略的と言うよりも戦術的である。

 二つ目の問題は、西側の団結欠如である。プーチンとの対決には、西側の団結が不可欠である。団結しないと分断、征服される。上記ワシントン・ポスト社説はドイツに厳しい。米国では「独は米の同盟国か」といった論調も出始めている。欧州にとり必要不可欠な独仏連携も見えない。

 今の危機を外交で解決することが必要なことは言うまでもない。プーチンの狙いかもしれないが、2008年のジョージア紛争(ロシア軍が南オセチア等を占領)のようなことを繰り返えさせてはならない。

 プーチンが如何にウクライナ問題をハンドルするか、中国、北朝鮮、イランは注視しているだろう。中露間に秘密の連携があったとしても驚かない。特に中国の脳裏には対米関係、台湾があるだろう。ウクライナ危機をきちっとやらないと悪しき先例になり、問題は世界に広がる。

 ロシアの要求は何か。12月ロシアはその要求をまとめた合意案を提出した。主な要求は、
① NATOの東方拡大を止めること、特にウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟禁止につき法的に確約すること
② 97年にNATOに加盟したエストニア、ポーランドなど10カ国以上の中欧、東欧の国々へのNATOの武器や部隊の展開を止めること
③ ロシアに届くミサイル(INF)の展開を禁止すること
④ 2015年ミンスク合意を実施し、東ウクライナの自治を認めること
などである。ロシアは事実上冷戦終了前の勢力圏への回帰を要求している。それは論外だ。

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