2022年11月29日(火)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年3月6日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

実にもったいない日本のサバ漁

 ノルウェーでは食用に向かない未成魚は漁獲されません。このため99%が食用となります。

 一方で日本の場合は約35%(2010年~19年平均)が非食用として養殖のエサなどに向けられます。また、輸出にまわるサバは、日本では食用に向かないサバを冷凍してアフリカや東南アジアに安値で輸出しているケースがほとんどです。参考までに、21年のノルウェーから日本向けのサバ輸出価格はキロ202円。一方で日本から世界各国への平均輸出価格はキロ124円で約1.6倍でした(本船渡し条件・ノルウェークローネ=13円)。

 未成魚狙いは避けて、脂がのって価値がある時期にだけ漁獲すれば、魚価が上がるだけではありません。水揚げ地の加工業者や、消費者にとっても加工したり、食べたりできる機会が増えることになります。

 サバだけではなく、高級魚のノドグロ(赤ムツ)やキンキ(キチジ)なども同様ですが、価値の低い小さな魚をたくさん獲ってその中から、価値が高い大きな魚を選んで流通させる構造になってしまっています。このため、消費者にとって価格が高く、漁業者にとって安いという最悪の組み合わせになることが少なくありません。(「魚と経済 消費者に高く漁業者に安い魚」)。一方で、大型で脂がのった時期にだけ漁獲すれば、魚価を下げる要因となる未成魚の漁獲が減り、価値が高いサバの割合が増えて、加工業者や消費者の双方にとって手を出しやすい価格となって行くのです。

自分がサバ漁する立場になれば分かること

 わが国が抱える水産資源の問題は、漁業者ではなく、その制度にあります。仮にご自分が漁業者であったとしましょう。漁獲枠は、無いかもしくは獲り切れないほど大きく、漁船や漁業者に割り当てられている数量も、割当自体が無いかもしくは獲り切れないほどあったらどうしますか? 脂がのっていない時期を避けますか? 小型の群れは見逃しますか?

 仮に水揚げ価格を、脂がのった大きなサバでキロ100円、脂もない小さなサバがキロ10円前後としましょう。沖に出たら魚群探知機に小さなサバの群れが映りました。この場合、どうしますか? 単価が安くてもたくさん獲ればお金になります。また、小さなサバを獲るのは、資源を考えれば良くないことは分かっても、見逃せば他の漁船が獲ってしまうと考えるのが普通です。これを「共有地の悲劇」と呼び、日本各地の漁場で起きています。

 サバに限らず日本の漁業の場合、魚を見逃しません。一方でノルウェーの制度ならどうでしょうか? 漁獲できる量が限られているのに、キロ10円の脂のっていない小サバまで漁獲してしまうでしょうか? 答えはキッパリとNOです。

ノルウェーサバに脂がのっていないサバを見ないわけ

 なぜノルウェーサバで脂がのっていないサバが見あたらないのか? その理由は、漁業者ではなく、水産資源管理の違いであることをご理解いただけましたでしょうか?

 わが国がやるべきことは持続可能な開発目標(SDGs)14「海の豊かさを守ろう」を実現すること(「SDGs14 日本の水産資源の危機」)。そして、その中にあるMSY(最大持続生産量)に基づく資源管理を真剣に行うことです。そうすれば自ずと過剰漁獲は抑制され、漁業の仕組みは変わります。つまり、日本でも脂がのったサバだけを漁獲する仕組みはできるのです。

 水産資源管理の基本は、ノルウェーと日本では違うからできないということではありません。

 そのためにも、世界の水産資源管理の成功例が広く国内に浸透し、何をどうすれば水産資源がサステナブルになるのか、正しい情報をもとに理解されて行くことを願います。

 
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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