2022年12月5日(月)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年3月6日

»著者プロフィール
著者
閉じる

片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

日本のマサバも脂がのるのは秋から冬にかけて

 下のグラフをご覧ください。マサバの脂肪分の比較です。左の初夏(6月)の5~10%程度と、右の冬(12月)15~25%では、脂肪分がノルウェーサバ同様に時期により大きく異なることが分かります。

(千葉県)写真を拡大

 ノルウェーサバの脂肪分のピークは25~30%程度ですが、日本のマサバも20~25%程度まで脂がのっているのです。

 鮮魚売り場には周年生のサバが並んでいますが、ここに問題が隠れています。春~夏にかけて、脂がのっていない時期に「まだサバに脂がのっていません」などと売り手は言いません。ですから、消費者が知る機会はほぼなく、食べてから脂がのっていないことを知るのです。

なぜノルウェーのサバはいつでも脂がのっているのか?

 ではなぜ市場に出回るノルウェーのサバは、いつも脂がのっているのでしょうか? それは、ノルウェーの漁業者は、いかにして水揚げ金額をあげるかを考えているからです。日本のように「大漁祈願」で、いかにたくさんの量を獲るかには、重点が置かれていません。ノルウェーでは、漁獲枠(TAC=漁獲可能量)と個別割当制度(IVQ=漁船別・個別割当制度)の2つが絶大な結果を出しています。

 ノルウェーでは、漁獲の大半(約7割)を占める大型巻き網船の漁獲枠は、漁船ごとに漁獲量が割り当てられています。しかも、その漁獲枠は実際に漁獲できる数量より大幅に少ない割当て量です。ですから、魚の価値が高い秋から冬にかけて脂がのった大きなサバを漁獲して、水揚げ金額を上げようとするのです。これが資源的にも、経済的にも好循環を生んでいます。

 ノルウェー漁船は、秋から冬にかけての皮下脂肪が身に回って霜降り状態になる時期に漁獲を行います。そして脂がのった時期に漁獲されて冷凍されたものが、中国やアジア諸国で加工された加工品も含めて日本に輸出されているのです。ですから、いつでも脂がのったサバが売り場に並んでいるのです。

日本のサバの場合はどうなっているのか?

 一方で、日本のサバの漁獲は、全く事情が異なります。第一に漁獲枠(TAC)はあるのですが、実際に漁獲できる漁獲量より多くなっています。このため漁船は、食用に向かない価値が低い小型のサバでも容赦なく見つけたら獲ってしまう仕組みです(「サバの資源は大丈夫でしょうか? 次々に消えて行く魚」)。

 上の表をご覧ください。ノルウェーと異なり、日本の場合は漁獲枠が多過ぎることがわかります。日本の漁獲枠消化率が約60%なのに対して、ノルウェーではほぼ100%。これでは、日本では脂がのっていない時期でも、小型のサバでも漁をしてしまうので、資源管理にほぼ効果はありません。

 わが国の仕組みでは、ローソク、ジャミといったサバの未成魚も獲ってしまう「成長乱獲」が起きてしまいます。サバだけではありませんが、成魚になって卵を産めるようになる前の魚も獲ってしまえば、産む卵の量も減ってしまいます。

 サバが成熟するのは、2歳で約50%、3歳でほぼ100%です。これは日本もノルウェーのサバもほぼ同様です。しかしながら、ノルウェーでは3歳未満のサバを漁獲することはまずありません。一方で日本では容赦なし。その結果、日本とノルウェーの海では、泳いでいるサバの年齢層が異なり、日本の海は価値が低い3歳未満の年齢層が低いサバが多くなっているのです。残念なことに、現実にはこの傾向は、海水温の上昇といった環境の変化というよりも、人間の力によるものです。

新着記事

»もっと見る