2022年7月6日(水)

家庭医の日常

2022年3月25日

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葛西龍樹 (かっさい・りゅうき)

福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座主任教授

1984年北海道大学医学部卒業。北海道家庭医療学センター設立および所長を経て、2006年から現職。英国家庭医学会 最高名誉正会員・専門医(FRCGP)。日本プライマリ・ケア連合学会監事。著書に『医療大転換 ─日本のプライマリ・ケア革命』(ちくま新書)など多数。

ウクライナの家庭医からの緊急報告

 家庭医には国際学会がある。世界各国の家庭医学会が加盟している「世界家庭医機構」だ。日本からは日本プライマリ・ケア連合学会が加盟している。世界家庭医機構の英語の正式名称は非常に長いので、最初の5つの頭文字をとってWONCA(ウォンカ)と呼ばれることが多い。WONCAには、世界で7つの地域学会があり、日本はアジア・太平洋地域学会に属している。

 先週、WONCAのヨーロッパ地域学会(WONCA Europe)が主催する緊急ウェビナーが開催され、私も参加した。ウェビナーでは、ウクライナの家庭医パブロ・コレスニク氏(以下、パブロ)がロシア軍侵略後の人々の健康状態と医療支援の現状を講演し、質疑応答が行われた(このウェビナーの動画は早くもWONCA Europeのホームページに公開されていて、誰でも視聴することができる)。

 パブロは、ウクライナ西部のスロバキアとハンガリーとの国境に近い人口約10万人の町Uzhgorod(ウジホロド)で25年間家庭医として働いている。ウジホロドはこの地方の州庁所在地であるが、北部の山々が天然の要害となり、現時点ではまだ安全だという。

 彼は、ウジホロド国立大学の外来診療部門と家庭医療学講座の主任をしている。WONCAメンバーとしても積極的に活動していて、特にWONCA Europeで活発な教育(EURACT)、研究(EGPRN)、そして予防・健康増進(EUROPREV)領域の家庭医が参加する各分科会の評議員を務めていて、ヨーロッパを中心に世界の多くの家庭医とのネットワークがある。

 コロナ禍で、WONCAも含め多くの学会がその学術集会やセミナーをオンラインで開催しなければならなくなった。それはそれで直接人と会えず残念なことではあるが、今回のようにウクライナの家庭医が自室から話す報告を日本からもリアルタイムに耳を傾け質疑応答に参加できるのは、オンラインでのウェビナーの技術が進歩したおかげである。

難民で人口は2倍に

 以下、パブロからの報告の要点を共有したい。

 ウジホロドには、ウクライナ国中から多くの人たちが避難して来ている。多くの人々がここから他のヨーロッパの国々へ、難民としてさらなる避難を続けて行く。そのため鉄道と駅は大混雑している。

 しかし、さらに多くの人々は、言葉の問題や頼れる人がいないなどの理由で国外へ行くことは望まず、ウジホロドに留まることを選択している。そのため現在、町の人口は2倍になっている(10万人から20万人)。多くのウジホロドの市民が自宅を避難民に開放している。

 例えば、パブロの家には現在11人の避難民が一緒に住んでいるという。一般の家屋はもう収容の限界に達しており、自治体の建物、大学の寮、体育館なども利用している(50人ほどが収容されている体育館の写真も示された)。

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