2022年10月6日(木)

スポーツ名著から読む現代史

2022年3月23日

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中島章隆 (なかじま・ふみたか)

元毎日新聞運動部長・論説委員

なかじま・ふみたか 1952年長野県生まれ。元毎日新聞運動部長・論説委員。現在は立教大講師、東京プロ野球記者OBクラブ理事。月刊政策情報誌「毎日フォーラム」で2009年から「スポーツを読む」を連載している。

 北京五輪の閉幕を待っていたかのように2月24日、ロシア軍が隣国ウクライナに侵略した。戦火はウクライナ各地に広まり、平和を願う国際世論にもかかわらず、収まる気配が見えない。「戦争とスポーツ」のテーマで考えたとき、まず思い浮かべたのは、1990年代の旧ユーゴスラビア紛争当時、サッカーのユーゴ代表監督として国家崩壊の渦中にありながらチームを結束し、手腕を発揮したボスニア出身のイビチャ・オシム氏だ。

(アフロスポーツ)

 ジーコ監督の後を受け、2006年に日本代表監督に就任したが、W杯南アフリカ大会を2年半後に控えた2007年11月、脳梗塞で倒れ、代表監督を辞任するアクシデントに見舞われた。奇しくも今月24日には、勝てば今年11月のW杯カタール大会の出場権を得るアジア最終予選のオーストラリア戦を迎える。

 日本代表監督としては「未完」に終わったオシム氏が、著書などを通じて残した多くの名言・苦言から日本サッカーが何をくみ取るべきか。探ってみたい。

経験に裏打ちされた数々の「言葉」でチームを勝利に

 1990年のW杯イタリア大会で母国ユーゴスラビアを率いてベスト8に導いたオシム氏は、祖国の分裂に伴い代表監督を辞任。ギリシャやオーストリアのクラブ監督を経て2003年から3年半、Jリーグ・ジェフユナイテッド市原の指揮を執った。

 相手の心のうちまで見透かすような鋭い眼光。口を開けば謎めいた難解な言葉が発せられる。それまで日本代表のスター選手がいるわけでもなく、成績も目立たなかったジェフ市原が独自の練習方法も取り入れたオシム流攻撃サッカーでリーグ戦もカップ戦も優勝争いに加わり、注目度が一変した。とりわけ注目を集めたのはオシム氏が発する数々の「言葉」だった。

 「サッカーとは危険を冒さないといけないスポーツ。それがなければ例えば塩とコショウのないスープになってしまう」「ライオンに追われたウサギが逃げ出すとき、肉離れをしますか? 準備が足らないのです」「今の世の中、真実そのものを言うことは往々にして危険だ。サッカーも政治も日常生活も、世の真実には辛いことが多すぎる」――。試合後や、練習後のミーティングなどで発した含蓄のこもった言葉の数々が「オシム語録」としてクラブのホームページにも掲載された。

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