Wedge SPECIAL REPORT

2022年4月2日

»著者プロフィール
著者
閉じる

角田 仁 (つのだ・ひとし)

千葉工業大学 教授・デジタル人材育成学会 会長

1989年に東京海上火災保険に入社し、国内外の部門で、主にIT戦略の企画業務を担当する。2015年からはIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員を歴任。18年に博士号取得後、19年に同社を退職、21年に千葉工業大学社会システム科学部教授に就任。

「根本的な問題の先送り」は大企業の悪癖の一つともいえる。基幹系システムの刷新に合わせ、知識技能のアップデートを図るときだ。
話し手・角田 仁
聞き手/構成・編集部(川崎隆司)

 2025年の崖──。18年9月に経済産業省が公表した「DXレポート」で指摘されたこの問題を、現在多くの日本企業が抱えている。大手企業の基幹システムの約6割が、高度経済成長期の1980~90年代にかけて作られたが、当時30~40代で主要技術を担った団塊世代の多くが2025年には定年退職を迎える。

 その先に何が起きるのか。老朽化した複雑な基幹系システム(レガシーシステム)がトラブルを起こしたとしても、ユーザー企業・ベンダー企業双方にシステム構築当時を知る者がおらず、ブラックボックス化したまま機能不全に陥ってしまう。経産省は、この問題によって25年以降、年間最大12兆円(18年時点の3倍)の経済損失が生じると見込んでいる。

 実はこの課題の背景にこそ、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)が遅々として進まない要因が潜んでいる。まず、日本の多くの企業経営者はデジタルを活用した新しい商品・サービスの開発や業務効率化には積極的だが、レガシーシステムの刷新には及び腰だ。なぜなら、前者はコストも小さく、失敗しても社内外への影響はさほど大きくない一方で、後者は多くの時間と多額の投資を要し、切り替えに失敗した際のリスクが大きい。結果、時代に即さないシステムの保守・運用に自社のIT人材が割かれ、ベテラン技術者が退職する現状を目の当たりにしながらも「自分が経営者の数年間、なんとか無事に稼働してくれれば」と問題を先送りにしてしまうのだ。

角田 仁(Hitoshi Tsunoda)
千葉工業大学 教授・デジタル人材育成学会 会長
1989年に東京海上火災保険に入社し、国内外の部門で、主にIT戦略の企画業務を担当する。2015年からはIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員を歴任。18年に博士号取得後、19年に同社を退職、21年に千葉工業大学社会システム科学部教授に就任。(WEDGE)

 さらに、日本特有のユーザー企業(事業側)とベンダー企業(開発側)との関係性も影響している。日本のIT人材の7割以上はベンダー企業に属しており、基幹系システム構築についてベンダー企業に丸投げのケースも多い。だが本来、将来事業を踏まえたシステムの企画構築を考えられるのはユーザー企業側であり、彼らが手綱を握らなければ事業の実態に即したシステムにはならない。また、みずほ銀行の度重なる不具合にみられるように、稼働後にトラブルが起こっても、運営主体であるユーザー企業自身がシステムの全容を把握できず適切な対応がとれない、といったことが起こりうる。

関連記事

新着記事

»もっと見る