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2022年4月26日

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BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)、BBCモニタリング

ウクライナ南東部マリウポリの大通りに、20人以上の民間人の遺体が横たわる映像が、ソーシャルメディアなどに投稿されている。

国連は、ウクライナ侵攻で起こったとされる数百件の市民殺害疑惑を調査していることを明らかにしている。

マリウポリでは数週間にわたり、ウクライナ軍とロシア軍が激しい戦闘を繰り広げていた。

BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)とBBCモニタリングが、これらの映像を検証し、何が起きたかを探る。

警告:この記事にはショッキングな写真や説明が複数含まれています

動画には何が映っているのか

マリウポリの通りの一角に遺体が横たわっているのが、4つの動画で確認できる。

そのうちの1つでは、私たちは18体の遺体を確認した。その全員が民間人の服装をしているように見え、武器は見えない。遺体のひとつは、バス停のそばに買い物袋と共に倒れている。別の遺体は、破損した車の隣にあった。

4本の動画で、合わせて23人の遺体が確認できた。

動画ではこのほか、破壊された建物や、倒れた電線、路上のがれきなども見て取れる。遺体のそばを通り過ぎる市民の姿も映っている。

どこで撮影されたのか

BBCは、動画はすべてマリウポリ北部のイリイッチ製鉄所近辺で撮影されたことを確認した。

遺体は、製鉄所の隣にあるボイカ通りに沿って横たわっていた。

BBCは、建物や道路の印、バス停、その他の動画内で視認できる証拠に加え、人工衛星からの画像やストリートビューの画像を使い、それぞれの場所を特定した。

たとえば、ひとつの動画では、遺体が電柱と独特な鉄柵の一部の前に横たわっており、後ろには工場の一部と白壁が映っていた。

これと同じ光景が、ロシア語検索サイト「ヤンデックス」のストリートビューで確認できた。

通信社が撮影した遺体写真の中にも、この映像と合致するものがあった。

映像は誰が撮影したのか

動画のうちの1つは、パトリック・ランカスター氏が撮影したものだ。米海軍出身のランカスター氏は2014年以来、自身のソーシャルメディアアカウントに、ロシアが占領したウクライナ東部から映像を投稿し続けている。

ランカスター氏はロシアの国営テレビや、アメリカの陰謀論ウェブサイト「InfoWars」に頻繁に出演している。

別の動画は、イタリアのジャーナリスト、ヴィットーリオ・ニコラ・ランジェローニ氏によるもの。同氏はウクライナ東部ドンバス在住で、3月末からマリウポリの動画を投稿している。

3つ目の動画はロシア系通信社ANNAニュースが、4つ目の動画は親ロシア派のテレグラムチャンネル「Signal」がそれぞれ投稿した。

映像はいつ撮影されたのか

映像の投稿時期は明らかになっていない。しかしBBCは、4つの映像のうち最も古いものはANNAニュースの報道で、4月15日にアップロードされていたことを突き止めた。

残りの3つのうちの2つは、4月18日と19日にはそれぞれインターネット上に掲載されていたことが追跡できている。

アメリカの戦争研究所(ISW)によると、動画が撮影されたエリアをウクライナ軍が支配していたのは3月28日までだったという。

ISWによると、ロシア軍は4月7日にこの地区を制圧したと発表した。ただしロシア国防省は、4月13日に数百人のウクライナ海兵隊がイリイッチ製鉄所で投降したと主張しているという。

BBCは米人工衛星会社マクサー・テクノロジーズに、3月までのボイカ通りの画像を依頼した。4月11日の画像が提供されたが、そこに明確に写っている遺体はなかった。

人々の死因は?

動画の中で取材を受けている通行人は、これらの遺体はウクライナの狙撃兵によって、通りがかりに殺されたのだと話していた。

ランジェローニ氏が撮影した動画内で話していた男性は、「ショックを受けている。狙撃兵はそこに座っていたそうだ。仕事の書類を取りに行く人たちを、次々と撃っていたらしい」と話している。

別の男性は、ランカスター氏にウクライナの狙撃兵はいるかと尋ねられ、ウクライナ人は当時「工場」にいたと答えている。この工場は、通り沿いの製鉄所を指している。

しかし、どちらの男性も殺害現場を目撃したとは言っていない。BBCはこれらの証言を検証できていないが、ウクライナとロシアの当局にそれぞれコメントを求めた。

ランカスター氏が撮影した動画には、取材される男性がウクライナ政府を長々と非難し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛する様子が収められている。

BBCは、取材を受けている人たちについて顔認証分析を行った。コンピューターのアルゴリズムを使い、動画内の顔を何百もの顔写真と比較していく手法だ。これによって、取材を受けた人たちが紛争中に撮影された他の動画に出演していないかを調べたが、合致する画像はなかった。

また、ランジェローニ氏とランカスター氏にもコメントを求めた。ランカスター氏は、「撮影を行ったのは激しい戦闘があった場所だ。私自身も取材した人物も、誰があの人たちを殺したのか、言及していない」と述べた。

物理的な証拠は?

BBCはこれらの映像を、軍の狙撃兵だった人物に見てもらった。この人物は匿名を希望している。

この人物によると、「遺体の傷は、狙撃によるものとは一致しない」という。

また、ある遺体が目を負傷しているのを示し、頭部を撃たれた場合にはもっと血が出ているはずだと指摘した。

BBCは何人かの病理学者にもコンタクトを取った。遺体中で顔が確認できるのはごく一部だったため、これらの人々がいつ、どのように、誰の手で殺されたのかを知るのはさらに難しい。

法医病理学コンサルタントのヴィクター・ウィーデン氏は、「工場近くの道路に散乱している遺体はみな、同じ時期に亡くなったようにみえる」と指摘した。

「映像では、着衣の遺体が遠くから撮影されているため、死因をはっきり特定できない。しかし頭を撃たれた疑いがある」

法医病理学者のカール・ウィグレン氏も、犠牲者らは「ほぼ同じ時期」に亡くなったと結論したものの、やはり死因を確定することはできないと話した。

一方で、ほぼ全ての遺体の周りに血痕がないと指摘した上で、「全身着衣の遺体にあからさまなけがが見えない」ことから、爆発の衝撃波による負傷の結果なのではないかという。

ウィグレン氏はさらに、すでに顔が腐敗している遺体について、数週間は同じ場所に放置されていたようだが、欠損部分は動物が食べた可能性もあると述べた。

取材:クリス・パートリッジ、リチャード・アーヴァイン=ブラウン、ポール・マイヤーズ、シャヤン・サルダリザデフ、ジェイク・ホートン、ヤナ・タウシンスキ、オルガ・ロビンソン、ジョシュ・チザム

(英語記事 The Mariupol street strewn with bodies

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61212684

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