
ウクライナ軍は11日、ロシアとの激しい戦闘が続いているウクライナ東部ルハンスク州で、ロシア軍が川を渡るために設置した浮橋を破壊したと発表した。また、東部の村を奪還したとも述べた。ウクライナのイリナ・ヴェレシュチュク副首相は、南東部マリウポリの製鉄所内に残る重傷者とロシア兵捕虜を交換する可能性を示唆した。
ウクライナ国防省は、東部の都市リシチャンスクに近いビロホリフカ村で撮影した、破壊されたロシアの戦車や武器庫などとする写真を公開した。リシチャンスクは戦略上重要で、ウクライナが保持している。
ルハンスク州のセルヒイ・ハイダイ知事は、ビロホリフカは南東部マリウポリと同様、ロシア部隊の進軍を「大量に阻止」している「要塞」だと述べた。
ウクライナ側の主張については独自に検証できていない。
ロシア軍はこの件についてコメントしていない。
ロシアは侵攻開始からの最初の数週間で、ウクライナの首都キーウや北東部地域の占領に失敗。その後、ルハンスク州と隣接するドネツク州を完全掌握するため、軍事作戦を東部に集中させている。
ただ、これまでのところ東部の完全掌握には至っていない。
ウクライナ軍、東部の村を奪還と
ウクライナ軍は11日夜、戦況について最新情報を公表した。
それによると、東部ハルキウ州ではロシア軍は守勢に立たされ、新たな進軍を試みていないという。
こうした中、ウクライナ軍は同州のピトムニク村を奪還したとした。ウクライナ軍は10日にも近隣の4つの集落を奪還している。
ロシアはドンバス地方のルビジュネとリマンの制圧を目指しているとみられる。
BBCはこれらの情報について独自に検証できていない。
製鉄所内の負傷者とロシア兵捕虜の交換
ウクライナのヴェレシュチュク副首相は、ロシア軍の攻撃で荒廃した港湾都市マリウポリのアゾフスタリ製鉄所内に残る重傷者と、ロシア兵捕虜と交換する可能性を示唆した。
ヴェレシュチュク氏は「まだ合意には至っていない」、「交渉は続いている」とテレグラムに投稿した。
ウクライナ政府は製鉄所に閉じ込められた兵士を救出するため、さまざまな選択肢を試みてきたものの、「どれも完璧なものではない」と、ヴェレシュチュク氏は述べた。
製鉄所に残る部隊は、ロシア軍には決して降伏しないとしている。
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ロシア、ミサイル約800発を発射か
ウクライナ軍によると、2月24日の開戦以降、ウクライナの標的に向けて発射された巡航ミサイルと弾道ミサイルの数は約800発に上るという。
ミサイルは主にウクライナ南部と東部を狙ったものだが、ロシア軍は社会的に重要なインフラなども繰り返し標的にしているという。
プーチン氏は「NATOとの対立を望んでいない」
ロイド・オースティン米国防長官は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について、ロシア軍と北大西洋条約機構(NATO)の対立は望んでいないとの見方を示した。
ロイター通信によると、オースティン氏は議会公聴会で、「これは彼(プーチン氏)が全く望んでいない戦いだ」と語った。
オースティン氏は、ロシア軍の多くがウクライナやベラルーシに駐留せざるを得なくなっている一方で、NATO側には約190万人の兵士がいると説明したという。
NATO加盟は「戦争を意味しない」
現在、スウェーデンとフィンランドはNATOへの加盟を検討している。
こうした中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナがNATOに加盟していればロシアとの戦争を防げた可能性があると語った。
ゼレンスキー氏はフランスのパリ政治学院の学生たちに、ビデオ通話で講演。その中で、「ウクライナが戦争の前からNATOの一員であったなら、戦争はなかっただろう」と述べた。
米CNNによると、ゼレンスキー氏は「手遅れでない限り」、ウクライナには交渉を行う「用意がある」とも述べた。
さらに、「ブチャやマリウポリで、何十人者もの死者やレイプ事件が発覚するたびに、交渉への意欲や可能性、この問題を外交的に解決する可能性も消えていく」と付け加えた。
(英語記事 Live Page)