2024年5月28日(火)

教養としての中東情勢

2024年4月24日

 イスラエルとイランの対決はイランが350発もの弾道ミサイルなどでイスラエル本土を攻撃したのに対し、イスラエルはイランの核開発の中心地域への精密攻撃で反撃した。だが、双方の軍事行動は全面戦争を避けるように緻密に練られた“チキンレース”の色彩が強く、軍事大国同士の衝突拡大の危機は当面、回避されたようだ。今回の応酬で誰が勝利したのか、その収支を計ってみた。

攻撃をないものにしたイラン

 現地メディアなどによると、イスラエルは4月19日未明、14日のイランのミサイル攻撃の反撃として、イラン中部イスファハン州の「第8シエカリ空軍基地」にミサイル3発を撃ち込んだ。ドローン(無人機)も攻撃に参加した。ミサイルのうち少なくとも1発は空軍機から発射されたという。

 この攻撃でイラン側のS300対空レーダーシステムが破壊された。イスファハン州はイランのミサイルなどの兵器生産の拠点であり、ナタンズにはイラン核開発の中核施設がある。このレーダーシステムはこうした重要施設を防衛するためのものだったが、攻撃を全く探知できなかった。

 特筆されるべきはイスラエルの攻撃に対するイラン側の対応だ。国営メディアはイスファハン近郊で侵入した「不審物」を迎撃したと報じただけで、イスラエルの攻撃であることには言及していない。革命防衛隊に近いタスムニ通信はイスラエルの攻撃を「虚偽」だと否定さえした。

イランの最高指導者ハメネイ師はイスラエルへの反撃をしないともとれる発言をした(提供:Iranian Supreme Leader'S Office/ZUMA Press/アフロ)

 最高指導者ハメネイ師は21日、イランによるイスラエル攻撃について「国家と軍の力を国際舞台で見せつけた」と称え、「標的にミサイルが命中したかは問題ではない」などと発言。イスラエルの反撃には一切触れなかった。ライシ大統領はイスラエルが攻撃する前、イランの権益に対するいかなる攻撃にも厳しくやり返すと警告していたが、これとは大違いの対応だ。

 「イラン側はイスラエルの反撃をなかったものにしたいのだ。経済的な苦境の中、これ以上イスラエルと事を構えるのを避けたいのが本音。ハメネイ師ら指導部にとってはイスラエル本土を直接攻撃してみせることがなにより必要だった。目的を達成した今は幕引きを図るのに必死だ」(ベイルート筋)。


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