2024年6月20日(木)

教養としての中東情勢

2024年4月24日

 中東最大の軍事大国であるイスラエルを国家として攻撃したのは1991年の湾岸戦争時のイラク以来であり、イランがイスラエルや米国と対決する「抵抗枢軸」の旗頭として、軍事力の誇示に成功したのは確かだ。イランの「代理人」であるレバノンのシーア派組織ヒズボラやイエメンのフーシ派などはあらためてイランへの信頼感を高めるとみられる。

 なによりも「イランにはうかつに手は出せない」という抑止力をイスラエル側に植え付けた意味は大きい。短期的には「勝利者はイラン」と言えるのではないか。

 だが、攻撃を受け、イランの通貨リアルは対ドルレートで最安値を付け、インフレも30%を超えたまま。経済的苦境はさらに深まった格好だ。

米国と秘密接触し事前通告

 イランの動きはイスラエルとの全面戦争も辞さないというギャンブル的な振る舞いのように見えるが、実際には水面下で周到な根回しとしたたかな計算をしているのも事実だ。それはイスラエルの後ろ盾である米国との秘密接触を重ねていたことに表れている。

 ベイルート筋などによると、イランはカタールやオマーンで行われているパレスチナ自治区ガザの停戦交渉を利用、米側と秘密接触を続けていたもようだ。イスラエル攻撃の数日前には、攻撃に踏み切ることを米側に伝え、攻撃直前にも最終通告していたという。

 大半の攻撃は砂漠など過疎地域を狙ったもので、時間のかかる無人機を弾道ミサイルの前に先行発射し、迎撃の準備を与えた。米側は秘密接触について否定している。

 イスラエルはイランのミサイルや無人機の99%を撃墜したと発表したが、その裏には米英仏軍とヨルダンも参加した防衛作戦があった。サウジアラビアなども米国を通してイスラエルに情報提供したようだ。米軍だけで70発以上を撃墜したが、イラン側の事前通告がなければ、イスラエルの防空網がいかに優れていても、これほどの成果は挙げられなかっただろう。

イスラエル、精密攻撃で警告

 イスラエルはイランのミサイル攻撃にどう反撃するか、迷いに迷った。戦時内閣では、ガンツ元国防相らがイランへの速やかな反撃を主張、これにガラント国防相らが米国との調整が必要だとして反対し、対イラン最強硬派のネタニヤフ首相はなかなか決断できなかった。

 イスラエルはイスラム組織ハマスとのガザ戦争を抱え、住民ら約150万人が避難する南部ラファへの侵攻準備を進めている。北方のレバノン国境ではヒズボラとの交戦が激化しており、いまイランと全面戦争に突入する余裕は事実上ない状況だ。頼みの綱は米国のバイデン政権だった。

 だが、パレスチナ住民の犠牲を顧みないイスラエルのやり方を批判してきたバイデン大統領はネタニヤフ首相との会談で、イラン攻撃に「米国が加担しない」ことを通告、自制を強く要求した。首相は米国から支援が得られないこともあって大規模攻撃を断念、限定的な攻撃にとどめる決断を余儀なくされた。


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