
香港で11日、キリスト教カトリック教会の最高位の1人が、香港国家安全維持法(国安法)違反で逮捕された。現地警察が明らかにした。
陳日君(ジョセフ・ゼン)枢機卿(90)は、経済的に困窮したデモ参加者を支援していた組織(すでに解散)と関係があったとして逮捕された。
ポップ歌手兼俳優の何韻詩(デニス・ホー)氏、元議員の呉靄儀(マーガレット・ウン)氏、学者の許宝強・博士も同時に逮捕された。
4人は外国勢力と結託した疑いがかけられている。有罪とされれば、終身刑になる可能性がある。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「香港にとって衝撃的な、新たなひどい事態」だとした。
香港警察は4人について、外国の政府や組織に香港への制裁を求め、中国の安全保障を脅かした疑いがあると、BBCに述べた。
中国政府を長年批判
陳枢機卿は、中国で共産党が権力を握った70年前に上海から香港に逃れ、香港教区トップの司教を務めた。長年にわたり中国政府を批判し、中国のカトリック教徒や香港の民主化に向けた発言をしてきた。
過去にはローマ教皇庁(ヴァチカン)について、中国に「身売り」したと公にいさめた。同庁が司教らに引退を強要し、中国政府が選んだ後任を利したと主張した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「90歳の枢機卿を平和的な活動をめぐって逮捕するのは、香港にとって衝撃的な、新たなひどい事態であり、ここ2年間で香港の人権が急速に落下していることを示している」とした。
ローマ教皇庁のマッテオ・ブルーニ広報担当は、枢機卿の逮捕を懸念しているとの声明を出した。
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現地メディアの香港フリープレスが法曹関係者2人の話として伝えたところでは、香港・嶺南大学の研究者の許博士は、学術的な職務に就くためにヨーロッパに渡ろうとしたところ、空港で逮捕されたという。
何氏が逮捕されたのは、この2カ月で2度目。同氏は昨年も、国安法に基づいて逮捕された。
弁護士の呉氏も逮捕歴がある。2021年には無許可のデモに参加したとして、執行猶予付きの1年の刑を言い渡された。裁判では自身の弁護士を解任して熱弁を振るい、法廷に大きな拍手が沸き起こった。
香港警察はBBCの取材に対し、4人は保釈されるが、パスポートを渡さなければならないと述べた。
裁判や医療の費用を支援
逮捕された4人は、民主化運動参加者の裁判や医療の費用を支援する「612人道支援基金」と関係があったとみられている。
同基金は昨年、警察の国家安全部門からメンバーや献金者の詳細などの機密情報を提出するよう要求されたことを受け、解散した。
2020年に中国が施行した国安法によって、香港では民主化運動家やデモ参加者が多数逮捕されている。
扇動、分離独立の動き、反逆を禁止しており、当局が抗議者を取り締まり、処罰するのが容易になっている。
今回の逮捕の数日前には、香港トップの行政長官に、親中国政府の李家超(ジョン・リー)氏が新たに選ばれている。