2024年4月17日(水)

日本の漁業は崖っぷち

2013年3月27日

限られた情報で子どもたちに誤解を与えてしまう

 水産業に関して記述されている中学校の社会の教科書を要約してみます。「日本では、遠洋漁業が盛んに行われていましたが、多くの国が排他的経済水域を設定して他国の漁業を規制するようになったため漁獲量が減っています。最近の漁獲量は最盛期の半分近くまで減り、水産物の輸入量が増えています。こうした中で漁業の重点は、獲る漁業から育てる漁業=養殖業へと移りつつあります。また、稚魚や稚貝を放流して増やす栽培漁業の取り組みも各地で行われています」。そしてこの内容をもとに課題として「昔から漁業が盛んな理由、共通する課題」は何か考えるようにと出ています。

 右肩下がりの漁獲量と輸入量が増えていくグラフ、200海里漁業専管水域の設定、遠洋漁業の衰退……。その一方で「世界の水産物の供給は、日本を例外として伸びている」という驚愕の事実。そして養殖についても「世界の養殖上位国ベスト10では、10年間で平均9%の成長率。マイナス成長は日本だけである」という事実(FAO2010年版)。重点を移しているはずの養殖業も世界水準と比べて伸びていないけれど、教科書に出ていないがために知られていない。

 恐らく子どもたちは、この程度の限られた情報では「200海里漁業専管水域の設定によって遠洋漁業が衰退し、国内では何故かイワシが減少、高齢者の漁業者たちは困っている。魚が足りなくなった分は輸入で補われていたり、養殖や栽培漁業で補われるようになってきたりしている」ということぐらいが精一杯かと思います。多分、学校の社会の先生であっても、世界で起こっている現実を知る機会が与えられていないために、子供たちに教えることもできないでしょう。

日本の漁業はなぜ衰退しているのか
教育現場で正しい認識を

 水産白書(平成22年版)に「今後、漁業や漁村を活性化させるために推進すべき取り組み(複数回答)」というものが出ています。漁業者からは「特産物の創出、ブランド化に等による販路開拓・漁業振興」が83%、漁業観光業との連携(朝市、直売所、宿泊施設等」が77%等となっています。また「漁業の魅力・やりがい」という項目がありますが、「自分の努力(技術)次第で収入を増やせる」が56%、「自分のペースで働くことができる」が19%となっています。

 これらのデータからわかることがあります。それは、肝心の日本の漁業が衰退している原因に対する分析が欠落していて、「漁は腕次第。たくさん獲って販売は工夫しよう」というといった理解になっているということです。

 しかし、こう誤解されてしまっている原因と責任は漁業者にあるのではなく、日本の水産業の課題と問題が、教育を通じて正しく伝わっていないためではないでしょうか? 欧米では、水産エコラベルや持続性がある水産物に対する関心が強いのに対して、日本ではその意識が希薄であるのは、情報供給と教育に問題があるのではないかと思います。


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