2024年11月24日(日)

茂木健一郎「伝えたい日本」

2009年3月6日

 今の日本は、どこか自信を失っているような気がします。一流の技術力を持ちながらも、どこか迷走しているように感じる。思うに、一人ひとりの心のなかに、日本に対する熱い思いが失われているからではないでしょうか。日本人自身が「日本がもっている技術や精神は一流なんだ」と思わなくては、いつまで経っても迷走し続けるだけです。そうした思いは偽装することはできません。日本ブランドというものを世界に発信するためには、まずは日本人自身が確信をもつこと。日本の素晴らしさを本気で思うことです。

 かつての日本にはそれがあったように思います。アメリカもイギリスも素晴らしいけど、日本だって負けてはいない。世界にないものを日本人はもっている。そう本気で信じていた。その強さがあったからこそ、戦後の経済発展ができたわけです。もう一度その原点に戻って、自信を取り戻すことが必要な時です。このことは企業人のみならず、一般の日本人にも言えることです。

 海外ばかりに目を向けるのではなく、日本国内にも目を向けることです。日本の四季の多様性、あるいは景観の多様性、その素晴らしさが日本のクオリアに対する感覚を培ってきました。この小さな国のなかには沖縄のような南国があり、北海道のような、広大な大自然に恵まれたところがある。これほどバラエティーに富んだ環境をもつ国は他にはなかなかないでしょう。そして京都や奈良には古の景観が残されている。そういう日本の素晴らしさを再認識することが大事です。日本国内に目を向けて、「日本とはこんなにも素晴らしい国なんだ」と国民一人一人が本気で感じること。そしてそれを世界の人たちに向けて発信することができれば、「日本ブランド」が世界のなかで確立できるでしょう。日本人一人ひとりが、日本の“プロフェッショナル”になることが大切です。企業ブランドとともに、日本ブランドのイメージを高めていくことで、力強い国家になると私は思っています。

◆さらに詳しい内容は、茂木健一郎氏の著書「クオリア立国論」でお読みいただけます。

 

 


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