2024年11月21日(木)

WEDGE REPORT

2022年6月10日

 さらに、フェイスブックやツイッターなどのSNSでの過去の投稿を調べたところ、『ザ・コーヴ』公開直後は来日外国人にはいわゆる「イルカを殺すな派」が多かった印象があるが、次第に水族館のためのイルカ生け捕りに対する批判を主張するビーガンの活動家で占められるようになった。

 ビーガンであるかどうかや彼らの思想背景は、過去のSNSの投稿歴から浮かび上がってきたとし、「現代社会に何かしらの疑問を抱いていた人物がこうした運動に関わるようになってビーガンに転じ、思想的に先鋭化していくパターンが少なからずあった」と語る。

 20年からは新型コロナウイルス禍の影響で、外国人活動家の来日そのものが出来なくなった。近年は日本の複数の活動グループが定期的に太地町を訪れている状態、と説く。

日本人の活動家のほぼ全員がビーガン

 一方、「ザ・コーヴ」公開時にはAP通信の東京特派員で、現在は太地町に居住しながら、この反イルカ漁キャンペーンの実態を研究しているジェイ・アラバスターさんも近年の対立の構図が大きく変容していることを肌身で感じ取っている。

 クジラやイルカは「知的で、人懐っこく、可愛らしい」動物だからこそ、手厚く保護すべきだと訴えていた活動家たちの姿が消え、反対キャンペーンは「数や可愛らしさに関わらず、全ての動物を救おうとする、より大きな動物保護運動」になったという。

 太地町に訪れる日本人活動家はほぼ全員が厳格なビーガンであり、一方で「反イルカ漁キャンペーンはビーガニズムと密接につながっていて、動物の権利運動の一部になった」とも指摘している。

 例年9月、イルカ漁が解禁される。コロナ禍の状況次第でもあるが、もし、一時的に沈静化していれば、再び、多くの外国人活動家の来日も予想され、そうした事態を見越して日本の警察や海上保安庁がすでに情勢分析を進めている。そうした中で、動物の権利やビーガニズムの大切さを訴える日本の活動家は東京や大阪などの大都市でも街頭デモを活発化させている。

 22~23年シーズンの漁期には、これまでで最も多い日本人活動家が抗議集会を行う可能性もある。一方で、太地町の反イルカ漁キャンペーンをきっかけにして、日本の動物の権利運動やビーガニズムがどう展開されていくのかもこの問題を見通す上で重要な要素となりそうだ。

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