
ウクライナ東部ルハンスク州のセルヒイ・ハイダイ知事は13日、ロシア軍との激しい戦闘が続くセヴェロドネツクへつながる橋が全て破壊されたと明らかにした。同市はほかの地域から事実上孤立し、物資の運搬や市民の避難ができなくなっているという。
ハイダイ知事は、セヴェロドネツクへつながる3つの橋が全て破壊されたとメッセージアプリ「テレグラム」に投稿。市内に残っている住民たちが「極めて困難な状況」での生存を強いられていると付け加えた。
ウクライナ当局は、ロシア軍の砲撃によりウクライナ軍がセヴェロドネツク中心部から後退したとしている。
セヴェロドネツクでは先週、ウクライナ側の義勇兵として戦った元英陸軍兵士が死亡している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、同市での戦闘による人的損害は「恐ろしい」ものだとし、ウクライナ軍は「文字通り1メートル単位で」ロシア軍と戦っていると述べた。
現在は街の約70%がロシアの支配下にあると報じられている。
この数週間、セヴェロドネツクの完全掌握がロシア軍にとって最優先の軍事目標となっている。
セヴェロドネツクと近隣のリシチャンスク市を掌握すれば、ロシアはルハンスク州全体を支配できるようになる。同州の大部分はすでに、ロシアの後ろ盾を受ける分離主義者に支配されている。
一方的に独立を宣言した親ロシア派地域、自称「ドネツク人民共和国」の部隊の幹部は、セヴェロドネツクに残るウクライナ部隊は「降伏するか死ぬか」のどちらかを選択しなければならないと述べた。
ロシアは「保護が目的」と主張
「ドネツク人民共和国人民民兵」のエドゥアルド・バズリン報道官はドネツクでメディアに対し、(セヴェロドネツクに)存在するウクライナの分裂は永遠にそこに残る」と述べた。
ロシア政府高官は、ロシアの目的はドネツクとルハンスクの「人民共和国」の保護だとしている。
ロシア国営通信社RIAノーボスチによると、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は「大まかには、共和国の保護が特別軍事作戦の主な目的だ」と述べたという。
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セヴェロドネツクの掌握は、ロシアにとって大きな象徴的勝利となり得る。同市とリシチャンスクはルハンスク州の重要な中心地であり、その両方を掌握すれば、ドンバス地方を完全に支配するというロシア政府の目標実現のための大きな一歩となる。
武器の必要性訴え
ウクライナ政府関係者は13日、西側から供給されている武器が思うように国内に届いていないと明かした。
ミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、戦争を終わらせるにはウクライナ軍にロシアと「同等の重火器」が必要だとし、ウクライナ政府が必要としている軍需品リストをツイッターで公開した。
https://twitter.com/Podolyak_M/status/1536245024354144257?s=20&t=vbI2AQw_UaEvze4Eb3_9ZQ
ウクライナのユーリー・サク国防相顧問はBBCワールドサービスの番組「ニューズアワー」に対し、重火器がもっと早く供給されていればセヴェロドネツクを防衛する部隊がより効果的に対処できていただろうと述べた。
ウクライナ部隊は「できる限り」街を守っているものの、「現時点までにもっと多くの重火器を得られていれば、もっと効果的に敵を撃退し、ウクライナのト土地を開放できていただろう」とサク氏は話した。
さらに、ロシアの圧倒的優位性を指摘。ロシア軍が1日に平均5万発の砲撃を行い、「迫撃砲や空爆、ミサイル攻撃で集中砲火」をしていると付け加えた。
ロシアはエネルギーで依然として大きな収入
2月の侵攻開始以降、多くの国がロシア産の石油やガスの輸出を標的とした制裁を科すなど、ロシア経済に打撃を与えようとしている。
ロシアは世界有数のエネルギー輸出国で、この分野が同国経済の重要な部分を形成している。
欧州連合(EU)やアメリカ、イギリスは、ロシア産のエネルギーの輸入量を減らすと約束している。
しかし、ロシアは開戦後の100日間で、石油とガスの輸出収入で1000億ドル(約13兆4000億円)近くを得ている。
多くの国がロシア産のエネルギー供給を敬遠したことから、収益は3月以降減少しているものの、依然として高い水準にあることがフィンランドのシンクタンク「エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)」の調査で明らかになった。
(英語記事 Every bridge leading to key Ukraine city destroyed /Ukraine round-up: City cut off and a story of escape)