
昨年1月の米連邦議会襲撃事件を調査している米下院特別委員会が16日あり、当時のドナルド・トランプ大統領がマイク・ペンス副大統領に対し、大統領選の結果を打ち消すよう違法な圧力をかけて危険にさらしたと、委員らが発言した。
与党・民主党が主導する同委員はこの日、3回目の公聴会を開催。冒頭には、トランプ氏がホワイトハウス前での演説でペンス氏に「正しいこと」をするよう求める映像と、議事堂にいたトランプ氏の支持者らが「マイク・ペンスをつるせ」と唱えた場面の映像が流された。
その後、ペンス氏の首席顧問だったグレッグ・ジェイコブ氏が、「私たちは文書、歴史、そして率直に言って常識を検討したが」、ペンス氏には選挙結果を覆す権限がないとの結論に至ったと証言した。
ジェイコブ氏はまた、18世紀のアメリカ建国の父たちは、「誰か一人を、選挙結果に決定的な影響を与える役割に置くことは決してなかっただろう。結果と直接の利害関係のある人については、なおさらそうだ」と述べた。
元保守派判事で、ペンス氏の非公式な側近を務めたマイケル・ルティグ氏は、もしペンス氏がトランプ氏の指示に従っていたら、「アメリカは憲法上の危機の範囲で、革命に等しいと私が考える状況へと突入していただろう」と話した。
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ツイッターで圧力
この日の委員会では委員らが、トランプ氏はツイッターで、ペンス氏には介入する「勇気」がないと投稿することで、圧力をかけ続けたと主張。そうした圧力作戦は、暴徒らの議事堂侵入をトランプ氏が知った後も続いたとした。
ベニー・トンプソン委員長(民主党、ミシシッピ州)は、「マイク・ペンス氏はノーと言った。プレシャーに抗った。彼はそれが違法だと知っていた」と述べた。
そして、「その勇気が彼をとてつもなく危険な目に遭わせた」と指摘した。
トンプソン氏はまた、ペンス氏がトランプ氏に屈することを拒んだことで、アメリカの民主主義が「トランプ氏の企てに耐えた」と発言した。
暴徒らが議会内になだれ込んだとき、ペンス氏は下院のホールにいた。15日の委員会では、彼と家族がシークレットサービスに連れ添われて避難している写真が公開された。
16日の公聴会では、民主党のピート・アギラー氏が、ペンス氏と暴徒らは約12メートルしか離れていなかったと述べた。
当時、ペンス氏と一緒に身を隠した側近のジェイコブ氏は、「そんなに近かったとは気づいていなかったと思う」と話した。
トランプ氏側近の証言も
この日の委員会ではまた、トランプ氏の複数の側近の証言映像が公開された。側近らは、暴動当日の朝、トランプ氏がペンス氏と電話で激しいやりとりをしているのを聞いたと語った。
側近の1人は、トランプ氏がペンス氏を「弱虫」と呼ぶのを聞いたと述べた。別の側近は、トランプ氏がペンス氏に対し、2016年に同氏を副大統領候補に選んだのは間違いだったと話すのを聞いたと証言した。
トランプ氏の娘のイヴァンカ・トランプ氏の首席補佐官を務めたジュリー・ラドフォード氏は、当時のトランプ大統領がペンス氏を「P」で始まる卑語で呼ぶのを耳にしたと、イヴァンカ氏から聞いたと述べた。
トランプ氏は、副大統領には議会の選挙認証を停止させる権限があると公に主張していた。法律学者やペンス氏の側近らは、この主張をでたらめだとした。
この日の委員会では、そうした主張を支える中心的存在だった保守派の学者ジョン・イーストマン氏が、退任前にトランプ氏に恩赦を求めていたことを示す証拠も明らかにされた。
司法長官も注視か
これまでの公聴会では、暴動時にトランプ氏と一緒にいた側近が、ペンス氏に対する脅迫的な言葉が唱えられているのをテレビで見たトランプ氏が、「彼はそれに値する」と肯定的に反応していたのを聞いたと証言している。
トランプ氏はこの委員会を、「いんちき裁判」だと非難。11月の中間選挙を前に、民主党政権が「惨状」から国民の目をそらすために考え出したものだと主張している。
BBCのサラ・スミス北米編集長は、特別委員会にはトランプ氏を裁いたり有罪にしたりする権限はなく、刑事事件として訴追することすらできないと説明。
しかし、司法長官はそれが可能であり、長官はこの公聴会を注視していることを明らかにしていると伝えた。