うつ病などメンタルヘルスを起因とする休職者数は、未だ減少の兆しが見えてこない。企業の人事担当者を取材して感じたことだ。「休職者数は横ばい」と多くの担当者は言うが、休職と復職を繰り返す社員に新しい休職者が加わるので、むしろ増加しているのではないか、という感触を抱かざるを得ない。メンタルヘルス対策に力を入れているという企業でも、復職社員への対策は医者任せが多く、取り組みは不十分だと思う。
復職者の大半は、短期間で再び休職するのが現実だ。一度休職した社員の再休職率は60%といわれる。2回の休職では70%、3回になると90%近い。この現状をどのように改善していけばいいのか。休職、または離職した会社員が社会復帰するには、どういう対応が必要なのか。企業の復職対策が向上するのを待ってはいられない。結局は、職場うつを繰り返さない自分を作ることが先決なのだろう。今回は、社会復帰支援サービスを展開するリヴァの伊藤崇代表取締役に聞いた。
伊藤崇(いとう・たかし)
2002年東北大学工卒、04年同大大学院情報科学研究科修了。新日鉄ソリューションズ(現新日鉄住金ソリューションズ)、福祉系ベンチャー企業を経て、10年8月リヴァを設立。11年から気分障害者を対象にした社会復帰支援サービス、12年から再就職支援サービスを開始。34歳。仙台出身。http://liva.co.jp
上司との価値観のズレが若者を不調にする
―― うつ病で休職、離職した人の社会復帰支援を事業化した経緯と、その背景にあるうつ病が増えている現状をどのように見ていますか。
伊藤:うつ症状が回復し職場復帰しても同じ職場で同じ環境であれば、再発する可能性は高くなります。多くの場合、本人のストレス耐性だけでなく、会社、上司のうつに対する理解度の低さも要因としてあげられます。それでも家族を抱えて働かなければいけない、何としても職場復帰したいという人たちの存在を知り、現状を何とかしなければいけないと考えました。そこで職場復帰に苦しむ人を支援するサービス提供を始めたのです。職場復帰を専門的に支援する社会インフラがない現状は、何とかしなければなりません。医療機関の中でも同様な取り組みがありますが、まだ一部です。もっと社会全体で具体的に支援する体制が必要です。