2024年6月14日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年4月10日

 しかし、ベトナム政府の抗議に対する中国政府の反応は想定内のものだ。海軍による射撃は否定せざるを得ない。もちろん、中国艦艇による射撃が本当になかった可能性もあるが、射撃があったとしてもこれを認めることは出来ないだろう。軍事力の行使は深刻な問題だからだ。これは、護衛艦へのレーダー照射事案における中国の対応に通じるものだ。そして中国指導者は、南シナ海で生起する事象が日本の思考・世論に影響することを理解している。もし中国が南シナ海で軍事力を行使すれば、日本は、中国が東シナ海でも軍事力を行使すると認識するだろう。南シナ海問題と東シナ海問題は連動するということだ。例え、中国にとって南シナ海問題と東シナ海問題が位置付けも性格も異なるものであったとしても、日本にはそのことは理解されない。

他国の論理は往々にして曲解するもの

 ところで、何故海軍の実力行使は問題なのか? それは、海軍と法執行機関の国際法上の位置付けが異なるからだ。戦時国際法下で直接敵に加害する権限を有するのが軍隊である。簡単に言えば、戦争において敵を殺すことを目的とした組織で、犯罪取り締まり等を目的とする警察権力とは全く別の意味を有しているのだ。それゆえ、通常、密漁等は、民間の機関たる警察等法執行機関が取り締まる。国際社会は、軍事力(自衛隊も含まれる)の使用に極めて敏感だ。

 先に、中国の認識は日本には理解されないと述べたが、反対に日本の考え方も中国には理解されないか、そのように装われる可能性もある。例えば海上警備行動は、日本国内の論理では警察権の行使だが、中国では日本の海軍力発動、中国に対する開戦として、武力行使の口実になり得る。「だから海警行動を発令するな」と言うのではない。必要なら当然発令すべきだが、エスカレートする可能性を認識し、制度的、物理的に自衛隊を戦える状態にしておかねばならない。要は政治の覚悟の問題なのだ。

 故意でなくとも、他国の論理は往々にして曲解するものだ。2012年12月の北朝鮮ミサイル発射実験の際、海上自衛隊の複数の艦艇が横須賀を出港したが、日本が中国と開戦するために艦隊を配置に就けたとニュージーランドで報じていると、当時現地にいた日本の友人が驚いていた。

 そして、衝突が生起しても、外部から真実を知ることは難しい。国際社会が真実を理解することなど過度に期待しない方が良い。正しいことを主張するのは当然だが、場合によっては、根拠に乏しくとも自国の利益のために自論を展開するのが国際社会の常識だ。「正しい・正しくない」と「支持する・支持しない」は必ずしも一致しない。理屈や根拠は後から付いてくる。各国は、どうすれば国際社会の支持を得られるか常に考えるものである。国際社会の主要なアクターたる各国は実利で動くという側面も忘れてはならない。


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