いい加減、「残コン」問題に
正面から向き合え
報道では、「JIS違反」ということに注目が集まったが、この問題には、もう一つの本質が隠されている。「残コン」だ。生コンが建築や土木の施工現場にミキサー車で運搬される際、必ず少し多めに出荷される。生コンが足りなくなると困るからだ。そこで余った生コンは、「残コン」として生コン業者が持ち帰るというのが、業界の長年の慣習なのだ。そもそも一度、販売したものを、買い手が処分するのではなく、売り手が持ち帰るというのはおかしな話であるが、零細業者が多い生コン会社は、力関係でこの商習慣に従わざるを得ないということが続いてきた。
この問題に20年近くにわたって向き合ってきた長岡生コンクリート(静岡県伊豆の国市)の宮本充也社長は「今回、小島建材店が行ったことは、ルール違反であり、決して認められることではない。ただ、都心部の生コン業者にとっては『残コン』を処理するにもスペースが足りないなど、苦労しているという話をよく耳にする」と指摘する。実際、「残コン」の再利用に取り組む長岡生コンクリートを訪問すると、その敷地は都市部にある小学校などのグラウンドよりもはるかに広い。
つまり、小島建材店が余った生コンを使用したように、「残コン」が存在する限り、それが転用されてしまう可能性が残るわけだ。「だからこそ、『残コン』には、行政、企業、業界団体、全ての関係者がきちんと向き合うべき」(宮本氏)ということだ。
ある生コン会社の幹部も「残コン」に関してこう話す。「量が多い場合は施工主に話すことはあるが、基本的にはサービスで持ち帰っている」。ただ、この会社でも以前は、「残コン」を産業廃棄物として処理していたが、ここ数年で全量再利用するように体制を整えたという。具体的には、「残コン」を乾かして路盤材にしたり、構造物以外のコンクリート、コンクリートブロックなどにして安く販売したりするといったことだ。
一方で「残コン」から砂と砂利を取り出して、「回収骨材」として再利用できるようにJISも改正されたが、ハウスメーカーなどユーザーはバージン材を好む傾向にあり、利用は進んでいない。