2022年8月14日(日)

BBC News

2022年7月31日

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は30日夜、ウクライナ統治下の東部ドネツク州にまだ残る全住民に避難を命令し、同州で戦闘が激化するとの見通しを示した。他方、ロシアの在英大使館は同日、ウクライナ軍アゾフ連隊の兵士には絞首刑による「屈辱的な死」がふさわしいとツイートした。これを受けてウクライナ政府は、ロシアを「テロ国家」と非難した。

ゼレンスキー氏、ドネツクからの避難を命令

ゼレンスキー大統領はウクライナ統治下の東部ドネツク州にまだ残る民間人に避難を命令し、同州で戦闘が激化するとの見通しを示した。大統領は、ドネツクに残る数十万人を「全面的に支援」すると約束した。

「今の時点でなるべく多くの人がドネツク州を離れれば、ロシア軍が殺せる人もそれだけ少なくなる」と大統領は述べ、「あらゆる機会を使ってできる限り大勢の命を救い、ロシアのテロ行為をできる限り制限する」と話した。


ロシア大使館のツイートに非難

アゾフ連隊に関するロシア大使館のツイートに先立ち、ロシア軍が占領するウクライナ東部ドネツク州のオレニフカ収容所で29日、ロシアが戦争捕虜にしたウクライナ人50人以上が死亡した。その中にはアゾフ連隊の兵士も含まれていたとされる。オレニフカ収容所を誰が砲撃したのかについては、ロシアとウクライナが互いを非難している。

この攻撃が広く報道されると、在英のロシア大使館はツイッターで、アゾフの「武装勢力は処刑するに値する。しかし、銃撃隊による銃殺ではなく、絞首刑によって。連中は本物の兵士ではないので。連中には屈辱的な死がふさわしい」と書いた。

大使館はこのツイートに、破壊された建物を案内する夫妻を映した動画を添付。その中で、アゾフ連隊がマリウポリの自宅を砲撃したと怒る男性は、同連隊兵士たちの処刑を求めている。大使館ツイートの文言は、この男性が口にしたもの。

ロシア大使館のツイートについて、ツイッター社は「攻撃的な行為」に関する自社規約に違反すると認めた上で、その旨の警告と合わせて掲載を続けることが公共の利益につながるかもしれないと表示している。

ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領首席補佐官は通信アプリ「テレグラム」に、「ロシアはテロ国家」だと書き、「21世紀にあって、何もしていない人間を絞首刑で処刑するべきだなどと、外交レベルで言えるのは、野蛮人とテロリストだけだ。ロシア連邦はテロ行為のスポンサー国家だ。これ以上、なんの証拠がいる?」と非難した。

ウクライナのオレグ・ニコレンコ外務報道官はツイッターで、ロシアの在英大使館のツイートを引用する形で、「ロシアを孤立させてはならないと誰かに言われたら、これを読んでもらいたい」とした。

その上で、「ロシアの外交官がウクライナの戦争捕虜の処刑を呼びかけるのと、オレニフカでロシア兵がそうするのと、なんの違いもない。全員が戦争犯罪の共犯で、責任を問われなくてはならない」と書いた。

ウクライナ政府のほか、ツイッターでは大勢がロシア大使館のツイートを強く非難している。

また、イギリスのメリンダ・シモンズ駐キーウ大使はツイッターで、ロシアを直接非難しないながらも、「オレニフカを調査する必要がある。最悪の人権侵害もしくは戦争犯罪が、罰せられることなくウクライナ東部で繰り返されている様子が懸念される」と書いた。

米国務省のアントニー・ブリンケン長官は、ロシア軍による残虐行為の責任をロシア政府に負わせるよう、米政府は努力していくと述べた。


国連と赤十字に真相調査を要求

ウクライナは、オレニフカ収容所の真相について、国連と赤十字による調査を求めている。

赤十字国際委員会は声明で、「現在の最優先事項は負傷者が確実に救命措置を受け、命を落とした人たちの遺体が確実に丁重に扱われるようにすることだ」と述べた。現場に入れるようロシアに要請し、負傷者の避難に協力すると申し出たものの、ロシア政府からの許可は得られていないと明らかにした。

赤十字ウクライナ代表部のダニエル・ブンスコグ副代表は、赤十字が戦争捕虜を支援できるようにするのは、ジュネーブ条約上の義務だと指摘した。

ロシア国営メディアは30日夜、ロシア国防省の発表として、ロシア政府が正式に国連と赤十字を現地へ招待したと報道。「客観的な調査を実施するため」としている。

収容所に拘束されていた中には、5月に南東部マリウポリの攻防戦で捕虜になったアゾフ連隊の兵士も含まれるとみられる。

民兵組織として2014年に発足したアゾフ連隊は、現在はウクライナ国家警備隊の一部だが、かつては極右とのつながりがあった。

ロシア側はかねてアゾフ連隊のことを、ネオ・ナチスや戦争犯罪人だと主張。今年2月に開始したウクライナ侵攻を正当化する目的の一つに、アゾフ連隊の掃討を挙げている。

収容所で何が起きたのか

ドネツク州オレニフカの収容所で何が起きたのか、詳細は判明していない。収容所は親ロシア派の自称「ドネツク人民共和国」の管理下にある。

ウクライナとロシアの双方は相手が収容所を砲撃したと互いを非難している。未検証のロシア側の映像には、壊れてねじ曲がった簡易ベッドの残骸や、焼け焦げた遺体が映っている。

ウクライナ政府は、ロシアによる拷問や殺害の証拠を隠滅するため、ロシア軍が砲撃したのだと主張。ゼレンスキー大統領は「ロシアの意図的な戦争犯罪」だと非難した。

対するロシア側は、ウクライナが高精度の多連装ロケット砲で収容所を砲撃したのだとしている。「ドネツク人民共和国」を自称する親ロシア派のダニイル・ベズソノフ報道担当は、「捕虜を収容する兵舎が直撃され」、捕虜53人が死亡し、75人が負傷したと述べた。

ロシア国防省は、アメリカがウクライナに提供した機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」による攻撃だと主張。ウクライナが「意図的な」挑発行為に及んだと非難した。同省は、HIMARSが発射したロケット砲の破片だと主張するものを証拠として示している。

他方、ウクライナ側は砲撃や爆撃を否定。ゼレンスキー大統領の顧問は現場の様子から、放火のようだと指摘。ミサイル砲撃だった場合、遺体は飛散していたはずだと主張した。

格納庫のような宿泊施設が破壊された様子を写した映像は、29日朝からオンラインに登場。ロシア国営テレビ「ロシア1」の映像から、建物外の破壊や流血の映像に切り替わる。建物内部の様子と屋外の様子が、同じ建物の内外なのか、BBCは検証できていない。

ただし、BBCの「リアリティー・チェック」チームは、建物の外で撮影された映像は、ウクライナ東部ドネツク州オレニフカの近くにある第120刑務所の様子に一致すると確認した。


この刑務所は2022年2月以前は無人で、その後はロシアの「濾過(ろか)」手続きを通過していない戦争捕虜や民間人の収容に使われた。ロシアの「濾過」手続きとは、ウクライナで拘束した人々を尋問した後、次の移送先を決定するもの。

ウクライナのアゾフ連隊を創設したアンドリー・ビレツキー氏は、収容所における死者の中に、連隊の兵士が複数含まれていると話した。

今年5月までマリウポリのアゾフスタリ製鉄所に立てこもり、ロシア軍に抵抗していたアゾフ連隊から、複数の兵士が投降後に、オレニフカへ移送されたことが確認されている。

ウクライナ当局は、オレニフカに運ばれた戦争捕虜は拷問されたと主張してきた。

(英語記事 Ukraine War: Zelensky orders civilians to evacuate Donetsk region / Ukraine condemns Russia's 'humiliating death' tweet

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62366245

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