今月は旅に持って行きたい一冊を選びました。
ちょっと重い本もありますが、その分面白いです。
謎の巨大湿地帯
『イラク水滸伝』高野秀行、文藝春秋、2420円(税込)
イラクと聞けば、乾いた砂漠のイメージが浮かぶ。しかし、巨大な湿地帯が存在し、歴史的にそこに多くの人々が住んでいたという新聞記事を読んで「こりゃ行ってみるしかない!」と思い立つ。数々の未開の地域を旅して、唯一無二のノンフィクション作品を綴ってきた著者の真骨頂だ。ただし、イラクといえばイスラム国(IS)が台頭したこともあり容易に行ける場所でない。それでも、著者は行きたいという情熱に突き動かされる。同行者の山田隊長のスケッチも必見だ。
医師が「お気の毒」と言う時
『ファック・キャンサー 愛と科学と免疫療法で がんに立ち向かう』メリー・エリザベス・ウィリアムズ(著)、片瀬ケイ(訳)筑摩書房 2530円(税込)
日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人はがんで亡くなるとも言われる。つまり、自分自身はもちろん、周囲の大切な人ががんになる可能性は高く、その際には、この忌まわしい病気に向き合わなければならないのだ。本書は、仕事と子育て真っ最中の40代前半NY在住ライターが、ある日突然、がんになり、その治療方法や、内面を書いたノンフィクションだ。「がん」と聞けば怖くて目を背けたくなるが、万が一に備えて予行演習になるエピソードが詰まっている。