今月は「ジェンダー」をテーマにセレクトしました。固定観念は日常の中にも、無意識の中にも潜んでいます。
家族の見かたが変わる
『21世紀家族へ 家族の戦後体制の 見かた・超えかた 第4版』落合恵美子 有斐閣選書 2090円(税込)
女性は主婦であるべきで、家事・育児を第一の仕事にすべき―。現代社会においても、心の中で、こうした意識を持つ人は少なくないのではないか。筆者は戦前から戦後のさまざまなデータを読み解き、女性学・歴史人口学などの視点も織り交ぜながら、家族のあり方が変化してきたことを示す。中でも興味深いのは、「戦後、女性は社会進出した」のではなく、「戦後、女性は主婦化した」というもの。家族に対する価値観、見かたが変わる一冊である。
自分らしく生きる
『少女、女、ほか』バーナディン・エヴァリスト(著)、 渡辺佐智江(訳) 白水社 4950円(税込)
英国で生きる12人の黒人女性たちの人生をたどる物語。女性、ノンバイナリー(女性、男性という枠に自分をあてはめない人)として生きる喜怒哀楽が赤裸々に語られていく。若くして3人の子どもを持つシングルマザー、大農場だった場所が自然に還る……。描写される様子は日本でも共通することが少なくない。世代を超えて物語は展開していくが、それぞれが家族、友人といった形でつながっている。そのつながりが、エピローグで驚きの展開となる。