うつ病蔓延時代への処方箋

2013年4月23日

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 学校に行けない、会社に行けないなどの社会的な現象があり、さらに悪化すると日常生活に支障が出る。働く人にとっては社会的に支障がある現象が出ているかどうかが、受診するひとつのラインになりますが、一般的には日常生活に支障が出てきた状態になって来院してきます。うつはいきなり悪化するのではなく段階的です。良くなったり悪くなったりを繰り返していきます。

 しかし、そうではない、その他の症状というのも増えています。診察の経過中で横断的に診断するとうつ病に当てはまる人がいますが、症状の良さ悪さをジグザグに繰り返さずに、ダラダラと悪くなる一方だったり、その中に妄想が入ってきたりとか、あるいは急に良くなるなど、多様なパターンがあります。

 昔でいう自律神経失調症なども、うつというカテゴリーに入ってきます。大うつ病というコアな円を描くと、その周囲に抑うつ状態や双極性、その他の症状の円が重なり、それらを合わせて大きな円になっているのが、いま問題視されている「増大するうつ」、といえるでしょう。この円が膨張しているわけです。うつというとらえ方が広がったことが数値的な増加を裏付け、現象的には働く人の抑うつが増えていることが、うつ病蔓延時代という社会的問題に結びついていると考えています。

疲労の蓄積で潰れた缶ビールになる

―― 抑うつ状態に陥るビジネスマンが増えてきた要因について、どのような見方をされていますか。

佐野:オフィスに情報機器が溢れている現状に関連があると思います。パソコンが業務遂行上の必需品になったのはバブル崩壊以降の90年代後半から。便利ですが、それだけに効率化が求められるようになりました。扱う情報量が激増し、しかもスピードがなければ競争に勝てない。ITによる業務効率化は新たな仕事と競争を作り出し、紙で作業していた時代よりも確実に仕事量が増えています。さらに、成果主義が導入され短期的な結果を出さなくてはいけなくなっています。

 このように業務が高度化していることに対応できる人は問題ないのですが、適応できない人が出てくる。それらの人たちが抑うつ状態に陥る可能性が増えている。紙の時代ならば何も起きなかったはずなのですが。さらに悪くしているのはコミュニケーション不足などもあります。ITスキルは問題ない人でも、結果を求められるプレッシャーや10時間以上もディスプレーを見つめ続けることによる視神経疲労と脳の疲労が日常化し、自宅でもパソコンやゲーム、スマホなどで過ごすのが一般的になっています。

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