2023年1月31日(火)

サイバー空間の権力論

2013年5月14日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 とりわけアノニマスを語る上で重要なのは、彼らが被る特徴的な仮面である。それは、1980年代に書かれたイギリスのコミック『Vフォー・ヴェンデッタ』の中で、全体主義国家に立ち向かう主人公が被っていたものであり、権力への抵抗を意味するとともに、匿名集団のアノニマスを表す象徴的アイコンとして機能している。

仮面によるアイコン的動員戦略

 アノニマスの仮面は、そのユニーク性を武器にインターネット上の「祭り」感を煽る。さらに、仮面を通して発言することで、匿名の人々の多様な意見がひとつに集約され、集団としてのアノニマスがまるで一人の人間であるかのような人称性を与える。

 また、大義とアイコンさえ受け入れれば誰もがアノニマスとして多様な活動が可能になるため、アノニマスの活動に参加する人々が増加する。さらに、アノニマスの誰かが逮捕されようと仮面の裏の生身の人間は多数存在することから、その活動が失速することもない。

 こうしたことから、アノニマスは世界中の人々を魅了し、抗議へと人々を駆り立てる。大義や仮面を巧みに配置することで、彼らは人々の抗議の気持ちを促進させることに成功している。Youtubeに動画をアップし、Twitter等で情報を拡散、ネット上で作戦を議論し、サイバー攻撃を仕掛ける。あらゆる意味で、情報社会の技術や知恵をフル活用することでしか彼らの活動は成立しない。逆にそれらを活用することで世界中の人々を動員することに成功したのである。

北朝鮮を攻撃
韓国も巻き込んだ騒動に

 2013年4月3日にアノニマスは、北朝鮮の公式Twitterアカウントをハッキングし、金正恩第一書記をからかう画像を掲載するとともに、北朝鮮系のサイトをダウンさせた。アノニマスはその後、対韓国向けに自国を宣伝するサイト「我が民族同士」の会員情報9001件を公開した。アノニマスはこれらの行為に及んだ理由を「北朝鮮が自由と平和を脅かしているからだ」としている。

 問題は、このサイトの会員が韓国では「親北」とされており、1948年に反国家活動を規制する目的で制定された、韓国の「国家保安法」という法律で有害サイトに指定していることにある。このことから、同法を理由に会員登録者への処罰も可能であるといわれているため、公開後すぐに韓国では会員を「スパイ」とみなして人物特定が行われ、該当する人物にネット上で大きな批判が行われた。

 こうした事態は一部で「魔女狩り」とも呼ばれている。無論、北朝鮮への賛同ではなく、調査のために登録した者もいるだろう。また仮に北朝鮮に親近感を持っていたにせよ、思想信条は民主国家であれば自由であり、実際に国家安保法で個人が裁かれた時に議論すべき問題である。

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