2023年1月31日(火)

サイバー空間の権力論

2013年5月14日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 こうした韓国内の騒動はアノニマスが意図したことではないだろう。しかしいずれにせよ、一部ではアノニマスの活動がある意味「余計な混乱」を生じさせたとする批判もある。そうした批判は韓国内の問題だけでなく、北朝鮮への刺激に対しても生じている。すなわち、核兵器に関するシビアな国際情勢の中で、アノニマスの活動が原因で、北朝鮮がより極端な政策を打ち出すことも十分想定できた。これを踏まえれば、国際政治上の高度な政治判断が要求される場面において彼らの活動は「邪魔」だというわけである。

国際法は成立可能か

 本稿はアノニマスの活動を参照してきたが、合法・違法に関わらず、アノニマスに対しても賛否両論の声が聞かれる。彼らの活動は社会運動として評価される一方で、リーダーなき集団であるが故に、責任を問う主体がおらず、また一部の暴走を止める手立がない。毎年逮捕されるアノニマスもいるが、すべてを逮捕できるわけもない。

 合法的な抗議活動は認められるべきだが、問題は違法行為であり、そこにも様々な問題が存在する。例えばDDoS攻撃については、ネット上の座り込み運動として認めるべきだとする論者がいる。DDoS攻撃は全世界的に違法とされているが、それらを抗議活動として認めるべきだというのである。しかしそのような議論はすぐさま、どの程度であればDDoS攻撃を許容し得るか、といった議論となる。しかし、何を認めて何を認めないかといった判別は困難である。さらにサイバー法は各国によって制定されているが、未だ世界で統一されていない。このことからも、サイバー法を統一することが極めて困難であることがわかる(この問題について詳しくは、岡崎研究所「サイバー攻撃に関するルール作りの第一歩」http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2763 を参照)。

 技術的に政府や企業への抗議が容易となった現在の情報環境下では、彼らの行為を止めることは困難であるばかりか、活動がより一層過激化することも十分予想できる。技術の発達によって一般レベルで容易に権力行使が可能である以上、権力の暴走は阻止しなければならない。しかし他方で、従来権力を握っていた権力組織、権力体への対抗として技術が利用されているのも事実であり、その意味でアノニマスの活動は評価されている。

 とすれば、技術の発展に対応した法が必要不可欠だが、上述のとおり、現実的に考えて国際法としての成立はまだまだ先になるだろう。この点に関しては法だけでなく、技術的な側面からサイバー空間上の制度構築の道を模索して行く必要がある。現実に、サイバー空間上の技術が、人々の行動規範に影響を与えているものも多い。そこで次回は、サイバー空間の技術が我々に与える見えない影響力について考察したい。

[特集] サイバー戦争


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