2024年7月23日(火)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年5月27日

 一方、歳出面でも今年3月から強制的な歳出削減措置(sequester)が発動されている。13年度では、国防費、教育関係費といった裁量的経費を中心に640億ドル程度が削減される。いくら米国の連邦予算総額が3.5兆ドル近くあるといっても、円換算で約6.4兆円(1ドル100円で換算)に及ぶ歳出を1年で削減するのは容易ではない。

日本も駆け込み賃上げを

 CBOは、1月以降の増税と3月からの強制歳出削減で、2013年の米国GDPは1.25%下押しされるとしている(2月時点の試算)。それにもかかわらず、景気は堅調に回復していて株価は史上最高値を更新している。

 14年4月からの消費税率3%引き上げに身構える日本にとってはうらやましい限りだが、米国の財政健全化をうらやましいとばかり言ってはいられない。むしろ、現在の米国の財政収支改善は、日本にとって参考となる点がいくつかあることに注目しなければならない。

 ひとつは、当たり前のことだが、増税など痛みをともなう改革をすることが本格的な財政健全化への道筋をつけることだ。景気拡大策さえ採れば税収増と財政健全化が実現するとして、歳出削減や増税などもってのほかとする考え方に終始していては、構造的な財政健全化などできるはずがない。

図表3 日本:財政収支の対GDP比とGDPギャップ
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 2つ目は、増税策が欠かせないとしても、財政健全化を後押しするのは好景気という事実だ。現在の米国の財政健全化でも、CBOは景気拡大で想定以上に法人税収が増えていると指摘している。主要国の事例を見ても、経済成長率が潜在成長率を上回るか、下回るかは財政収支の改善、悪化に影響している。日本も例外ではない(図表3)。

 3つ目は、所得税増税前に企業が従業員などに利益の駆け込み還元をするのが望ましいことだ。少し分かりにくいことだが、米国では、13年からの所得税増税への対応として、昨年末に駆け込み的に追加配当を行った企業が少なからずある。

 もちろん、全企業が行ったわけではないが、それでも高所得者層にはCBOが想定する以上の所得増となって税収増に寄与したし、現在の米国の消費堅調と良好な景気展開を力強く下支えしてもいる。


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