5月23日、東京株式市場で日経平均株価が1143円を超える値下がりとなった。下落はITバブル崩壊時期の2000年春以来、13年ぶりの大きさで、史上11番目の大きさだった。マーケットが大荒れになると経済記者は緊張する。新聞やテレビではマーケットの担当者は主に東京証券取引所の兜クラブや日銀クラブの所属記者だが、ひとたび大荒れの展開となると、速報を出したりするなどスポーツの実況中継さながらの報道になる。
新聞、テレビでもトップニュース
ニュースとしての扱いも、株価が1000円を超える下落になると当然ながら大きくなる。新聞なら一面トップ、テレビでも最初のニュースだ。5月23日はまさにそうした日だった。アベノミクスへの期待でこれまで株価は一本調子で上昇してきただけに、衝撃は大きかった。
朝方、株価は順調に上がっていたが、その雰囲気は午後に入って一変する。午後にかけて株価が急激に下落したため、新聞は夕刊の遅版から紙面が大きく変わっている。市場が上昇から一転、下落に転じたのは長期金利の上昇などが原因だが、このほか、アジア市場の下落、中国の景況感指数の悪化などが指摘された。翌日の朝刊や朝のニュースは株下落一色で、朝日新聞は横見出しで「東証暴落1134円安」と報じた。読売新聞や日本経済新聞は「急落」という表現を使った。
批判的な朝日、毎日
対照的な日経、読売
見出しをいかに取るかはニュースの扱いに影響するのだが、「暴落」と強くとった朝日新聞は論調も厳しかった。
朝日新聞は一面の編集委員の論文で「アベノミクスの危うさ露呈」と見出しをとり、「株価上昇を景気好転と勘違いすべきだではない」「市場にお金を永遠に投資し続け株価を上げることはできない。この政策にひそむ危うさはそこにある」と断じた。毎日新聞も社説で「株価上昇や景気回復を、日銀が供給するお金の量を増やすことで実現しようとする考えは安易すぎる」と批判した。
安倍政権の政策やアベノミクスに批判的な日頃のスタンスが、株価急落に乗じてここぞとばかり噴出する形で批判を強めているという印象だ。一方で、日経新聞や読売新聞はこの株安は一時的なもの、という評価で、原稿や見出しについても「小休止」、「一時的な調整」といった表現が目立ち、朝日や毎日とは対照的だった。