2024年4月26日(金)

天才たちの雑談

2022年11月17日

エントロピーを放出するため
人間は宇宙を目指す

瀧口 そもそも人類はなぜ宇宙を目指すのか、中須賀先生はどうお考えですか。

中須賀 「エントロピー」を下げるためです。「熱力学的エントロピー」と「情報論的エントロピー」の2つがあり、中々分かりにくいですが、つまり「乱雑さ」です。ばらばらで、先読みできないような状況が、エントロピーが高い状態。次にどうなるかが分かっていて、きちんと整理整頓されている状態が、エントロピーが低い状態です。

 地球は、エントロピーが高い方に向かっているように感じます。例えば化石燃料は、石油など地底で圧縮されたものを燃やすことによってエネルギーをつくり出しますよね。そうすると二酸化炭素(CO2)が放出されますが、これはまさにエントロピーが広がっている状態です。つまり、どんどん乱雑になって、将来が読みにくい状態になっている。地球という閉鎖環境において、どのような活動でもエントロピーは必ず増える。これは熱力学の大法則です。地球温暖化や環境問題などは、全てエントロピーの増大ですよね。

瀧口 人間の活動によって、地球全体が乱雑になっていくわけですね。

中須賀 そうです。閉鎖系のエントロピーは絶対に増えるという前提で考えたら、閉鎖系であることが問題なのです。つまり、地球自体を閉鎖系ではなく「開放系」にしないといけない。開放系とは、別世界とエントロピーのやりとりができるということ。僕はそれが宇宙開発の究極の鍵だと思います。

加藤 地球をわが家だと考えると、「空気悪くなったな、窓開けて換気するか」みたいな感じですね。

江﨑 経済成長は物理的な制約があると難しく、拡大する環境において経済は持続的になる、と言えます。その中での成長領域の一つが、デジタルという無限の空間でした。宇宙もまた、その成長領域になり得る存在ですね。

 
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