エントロピーを放出するため
人間は宇宙を目指す
瀧口 そもそも人類はなぜ宇宙を目指すのか、中須賀先生はどうお考えですか。
中須賀 「エントロピー」を下げるためです。「熱力学的エントロピー」と「情報論的エントロピー」の2つがあり、中々分かりにくいですが、つまり「乱雑さ」です。ばらばらで、先読みできないような状況が、エントロピーが高い状態。次にどうなるかが分かっていて、きちんと整理整頓されている状態が、エントロピーが低い状態です。
地球は、エントロピーが高い方に向かっているように感じます。例えば化石燃料は、石油など地底で圧縮されたものを燃やすことによってエネルギーをつくり出しますよね。そうすると二酸化炭素(CO2)が放出されますが、これはまさにエントロピーが広がっている状態です。つまり、どんどん乱雑になって、将来が読みにくい状態になっている。地球という閉鎖環境において、どのような活動でもエントロピーは必ず増える。これは熱力学の大法則です。地球温暖化や環境問題などは、全てエントロピーの増大ですよね。
瀧口 人間の活動によって、地球全体が乱雑になっていくわけですね。
中須賀 そうです。閉鎖系のエントロピーは絶対に増えるという前提で考えたら、閉鎖系であることが問題なのです。つまり、地球自体を閉鎖系ではなく「開放系」にしないといけない。開放系とは、別世界とエントロピーのやりとりができるということ。僕はそれが宇宙開発の究極の鍵だと思います。
加藤 地球をわが家だと考えると、「空気悪くなったな、窓開けて換気するか」みたいな感じですね。
江﨑 経済成長は物理的な制約があると難しく、拡大する環境において経済は持続的になる、と言えます。その中での成長領域の一つが、デジタルという無限の空間でした。宇宙もまた、その成長領域になり得る存在ですね。
メタバース、自律型ロボット──。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。
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