2022年11月29日(火)

サイバー空間の権力論

2013年6月11日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 ただし洗脳は、完成すれば他者を自由に操れるだろうが、それまでにかかるコストは高く、洗脳にかからない人や洗脳から抜け出す人を考慮すれば、非常に限定的な効果しか持ち得ない。その意味で洗脳とは、極めて局地的で少数に限定された権力実践であり、大衆向けのものではない。

フーコーが提唱 「規律権力」とは?

 次に、フランスの思想家、歴史家のミシェル・フーコー(1926~1984)が提唱した規律権力という概念がある。これは一言で言えば、相手を自動的に服従させてしまう権力である。どういうことか。

 フーコーはパノプティコンという、囚人を監視するための施設に言及している。このパノプティコンは、円形の独房とその中心に看守の見張り塔がある大きな施設である。看守は円形の独房をすべて見回すことで囚人の様子を逐次チェックできるが、囚人からは塔にいる看守の姿が見えないように工夫されている。すると看守は、見張り塔にいなくてもよくなるのだ。なぜか。

 囚人は看守を見ることができない。だから看守がいようといまいと、24時間、いるかいないかわからない看守に「見られているのではないか」という不安に駆られることになる。すると囚人は、いつの間にか常に見られていることを意識し、徐々に模範囚的行動を取るようになるというのである。

 この「みられているかもしれない」という感覚をつくりだすシステム(ここではパノプティコン)さえあれば、囚人は勝手に模範囚になる。わざわざ模範囚になることを強要せずとも、相手がそうなるような心理的ストレスを与えること。これが規律権力であり、学校や工場、軍隊など、あらゆる場所でこうした権力が利用されているといるとフーコーは指摘する。

アマゾンのレコメンド機能も
「アーキテクチャ型権力」

 最後に、近年注目を浴びるアーキテクチャと呼ばれるタイプの権力がある。アーキテクチャとはもともと建築用語で「設計」を意味する。具体的なものとして、商業施設をバリアフリー構造することで、家族層や高齢者等といった多くの集客が見込める、といった設計。あるいは、ファーストフード店の椅子を意図的に堅くして客の滞在時間を短くし回転率を上げる、といったものがある。

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