筆者が最も好きな転生モノとは?
まさに守破離の概念そのものであり、現在の異世界転生ものもその
『蜘蛛ですが、なにか?』(かかし朝浩、馬場翁、輝竜司、KADOKAWA)
『異世界おじさん』(殆ど死んでいる、KADOKAWA)
『片田舎のおっさん、剣聖になる』(乍藤和樹、佐賀崎しげる、鍋島テツヒロ、秋田書店
『村づくりゲームのNPCが生身の人間としか思えない』(森田和彦、昼熊、海鼠、KADOKAWA)
これらの作品においては「主人公が人間以外に転生する」「異世界そのものを覗き込む」等々、さまざまな表現の仕方が開拓されていっている。
主人公がスライムに転生するという設定で大ヒットした『転生したらスライムだった件』(川上泰樹、伏瀬、みっつばー、講談社)に至っては、シリーズ累計で3000万部以上を発行する大ヒットを記録した。
そして本ジャンルで私が最も好きなのが、『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』(潮里潤、三嶋与夢、孟達、KADOKAWA)という作品である。
主人公の転生先は、剣と魔法を中心としつつも、「女性のほうが強く、男性は蔑視されている社会」。
そこに主人公は、特別な才能を持たない「その他大勢の一人(=モブ)」として転生した。ここから創意工夫をこらしながらステップアップしていくというストーリーなのだが、主人公や周囲の心の成長を描いており、異世界転生という舞台を活用しながら見事にオリジナリティを表現しきっている。
実はこのように、守破離の概念で上手く成功するためには、オリジナルへのリスペクトと、自らの強い意志を持つことが必要になる。
世界的な人気を誇る『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』というゲームがある。横スクロール型のアクションゲームで、キャラクターが超高速で移動することが特徴だが、まさに同作は、『スーパーマリオブラザーズ』へのリスペクトと、そこに対して課題感を持ち超えようという強い意志によって生み出されたものだ。
他にも日本のロックユニットであるB'zなども、洋ロックのオリジナルへのリスペクトに対し、独自の表現を加えていったことで成功した。このようにビジネスで成功する要諦は「オリジナルをリスペクトし真似ること」「その上でオリジナルの課題感を分析し、それを超えようと強い意志を持つこと」だとまとめることができる。逆に安易に儲けようとして真似るだけだと全てがコケる(失敗する)。
総じて、一つの分野が確立されて似たり寄ったりとなった際も、決してネガティブには捉えず「それはそれで良い」と見るべきだろう。守り破り、離れるというプロセスを意識してみることで、成熟した業界における光明が見えてくるのだ。