2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年6月18日

 北京の外交関係者は「現状では応じられないだろう」とこう語る。

 「中国共産党にとって非常に重要な北戴河会議の日程に近いこともあり、調整がつかないのではないでしょうか。しかも中国共産党指導部はいま国内問題からの圧力が強いことに警戒し、外交問題では大きなエネルギーを割きたくないと考えています。他の国との共同歩調を崩してまで朝鮮問題で大きな点数を稼ごうとは思わないのではないでしょうか」

 だが、別の外交関係者は「その可能性は十分にある」とこう語るのだ。

 「先の中米会談でも一貫して示されたのは、アジア地域でのアメリカによる干渉の排除という中国のもつ裏の意図です。あの会談は、世界全体のことではアメリカと協力し、さらにアメリカが実現したい問題にも中国は積極的に協力するが、アジア地域においてはある程度中国の裁量を認めるという新たな関係を求めたものです。その意味では朝鮮半島の問題で北朝鮮との結びつきを強化することは中国の国益に資すると考えられます」

 もし60周年記念式典で朝鮮半島情勢が大きく変われば、それはすなわち日本と韓国の力が朝鮮半島から失われることを意味する。これはアジア全体における日本の影響力を抑えたい中国の思惑とは親和性が高いのだ。

 「外交を鎮めて国内に集中したい中国にとって最もやっかいなのは対日問題です。海という視点では南シナ海も同じく重要ですが、何といっても尖閣諸島の問題は、ハンドルを少し間違えただけで即座に国内問題に火が着くデリケートさを含んでいます。つまり半分以上国内問題ともいえる懸案なのです」(党中央関係者)

3月末に「司令塔」を新設した中国

 中国の外交が対日問題を中心に“戦略的”な色を帯びるようになった背景には内政への集中という差し迫った問題があるからだ。その中国外交の方向転換を象徴的に意味しているのが、「司令塔が変わったこと」だとこの関係者は語るのだ。

 「その司令塔は今年3月末、党中央のなかに新設されました。そしてこの訪朝も最終的にはこの組織が判断することになるのでしょう。その名も党中央国家安全事務領導小組です。従来、中国外交の司令塔として党中央外事領導小組があり、そのなかに同名の組織もありましたが、この組織はまったく違ったものです。機能が大幅に増え、外交の重要な機能は国家安全事務領導小組に移管されたと考えてよいはずです」


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