2024年12月3日(火)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2013年6月4日

 シンガポールの親しい友人たちは例外なく超エリートだ。彼らは全員留学経験があるが、英米だけでなく日本や中国などにも留学又は駐在しているので、多様性のある考え方の持ち主が多い。共通言語は英語、中国語だが、第3言語もできるのが普通だ。

 大卒のトップクラスの初任給は6000シンガポールドル(約48万円)である。競争に勝ち残れば高い報酬が約束される。シンガポールの高級公務員などは報酬も多い分、義務感も強いように見える。一方で、就職してからも競争は続き、成績が悪ければ自動的に10%くらいが退職を余儀なくされるという。

 今年、弊社でシンガポールに現地法人を設立した。社員は就労ビザが必要になる。その取得条件が年々厳しくなっている。役職と報酬額と学歴がチェックされるが、海外赴任を計画していた1人に、日本の大学を辞めて海外留学した社員がいた。訳があって留学先の大学も中途退学した。それでも、海外経験は充分なので、本人の実力を見て適格であると判断した。 

 だが、シンガポールのルールでは高校卒業としてしか扱わないので就労ビザが下りなかったようだ。外国企業の人材でも受け入れ条件が厳しいのには驚かされた。明らかに特権意識が働いており、特殊技能者でもなく、高給でもない一般的な高卒労働者は、シンガポールの国民の労働の機会をなくすという観点から労働ビザを出さない方向に規制をかけている。

「明るい北朝鮮」と揶揄されるほどの徹底ぶり

 考えてみれば、私の孫娘は上海で地元の小学校に通っていたが、宿題の多さや毎日行われるテストで席順まで決まる猛烈教育のやり方を聞いて驚いたことがある。成長するアジア各国では、選抜制度があって徹底したエリート教育が行われているのが当たり前なのだ。どうやらぬるま湯体質で悪平等教育を推進しているのは日本だけのようだ。

 淡路島と同じ大きさの国土しかないシンガポールは建国当時、東南アジアの貧乏国家だった。マレー半島の先端に位置する港湾だけが頼りのその新興国家が1965年の建国後わずか50年間で世界に冠たる経済大国になった。2007年に日本の1人当たり名目GDPを追い抜いた。その秘密は何か? その答えが「超エリート主義」と「借景思想」である。


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