
英王室サセックス公爵ハリー王子の回顧録「スペア(予備の意味)」が10日、正式に発売された。イギリス各地の書店は、すぐに入手したい客の思いに応えようと、日付が変わる真夜中に店を開けた。
回顧録をめぐっては、先週すでにスペインで発売となったことから、内容がいくらか漏れ伝わるなどして混乱が起きていた。
この日、ロンドンの書店に並んでいた人たちからは、自分で直接情報を得るために本を手に入れたいという声が聞かれた。
英書店チェーンのウォーターストーンズは、「ここ10年で予約が最も多い本」のひとつだとしている。旗艦店のピカデリー店は多くの来客を当て込んで、10日早々に開店した。
別の書店チェーンのWHスミスも、ユーストン、ヴィクトリア、ヒースロー、ガトウィックなどの店舗で営業時間を拡大した。
「スペア」は16の言語で、世界各国で発売された。
<関連記事>
- ハリー英王子、メガン妃めぐり王室の沈黙批判 キャサリン妃との不和にも言及
- ハリー英王子、エリザベス女王の死去知ったのはBBCサイトで 4日前に最後の電話
- 兄王子から暴力、アフガンではタリバン殺害……ハリー英王子が回顧録で数々「暴露」
この本はイギリスではすでに、アマゾンのベストセラーの上位にランクインしている。ハリー王子の初めての性交渉の経緯や、兄のウィリアム王子に暴力を振るわれたとする主張など、ハリー王子が本で暴露している内容が漏れ伝わり、このところメディアの話題となっていた。
回顧録は全410ページ。王室内の対立と個人的な緊張、ハリー王子の成長、王室との仲たがいなどについて書かれている。
ハリー王子が父親のチャールズ国王に再婚しないよう懇願したという主張や、アフガニスタンでの従軍でタリバン戦闘員25人を殺害したとする説明も含まれている。
また、パニック障害の対策もあって幻覚性の薬物を服用したとの述懐や、妻メガン妃と義姉キャサリン妃が難しい関係にあったとする主張もある。
王室側は今のところ、この本について反応を示していない。
「スペア」では、母ダイアナ元妃を失った悲しみが癒えていない感覚が、主要テーマとなっている。ハリー王子は「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」を抱えていたとしている。
マスコミについては、ダイアナ元妃を追い回した責任があると主張。回顧録の宣伝を目的としたいくつかのインタビューでは、マスコミの状況を変えることが「ライフワーク」になると、ハリー王子は述べている。
回顧録には意外な内容も含まれている。ハリー王子とウィリアム王子が互いを「ハロルド」、「ウィリー」と呼び合っているとし、ハリー王子はディスカウントショップのTKマックスで服を手に入れていたと書いている。また、テレビで「フレンズ」をよく見ていたとの記述もある。
ハリー王子は、故エリザベス女王の死去を家族からではなく、BBCのウェブサイトで初めて知ったと振り返っている。
国王の妻のカミラ王妃や、ウィリアム皇太子夫妻らとの緊張関係についての「暴露」もあり、多くの議論を呼んでいる。
回顧録の謝辞の部分には、王族は含まれていなかった。ハリー王子はその代わり、「霧の中でも自分を応援してくれた」イギリスの友人らに感謝を述べ、「次は自分がおごる番だ」と書き記している。
また、「何年も解決できなかったトラウマの払拭」をセラピストが助けてくれたと述べている。
書店に列を作った人の思いは
すでにいくつかの情報が漏れ出ていたにもかかわらず、多くの人がいち早く回顧録を手に入れようと、夜遅くまで列を作った。
エッピング在住の大学教授クリス・イマフィドンさんは、ヴィクトリア駅付近の列に並んだ。BBCの取材に、ハリー王子が王室から離れた理由に「とても関心がある」とし、「当人の説明を知りたい」と話した。
オーストラリア・メルボルンからロンドンに引っ越してきたというバーテンダーのサーシャ・パーセルさん(27)も、「とにかく興味をひかれる」と興奮した様子だった。南ロンドン在住のサラ・ナカナさん(46)は、「英メディアとその報道の影響よりも先を行く」ために、すでにオーディオブックもダウンロードしたと話した。
英世論調査会社ユーガブが9日に発表した調査では、イギリスでのハリー王子の人気は落ち込みを示した。
ハリー王子に対して否定的な見方をする人は64%、肯定的な見方をする人は26%だった。肯定的に見る人は昨秋の33%から減っており、ここ10年以上で最低となった。
5年前のこの追跡調査では、調査対象の成人約1700人の80%が、ハリー王子に肯定的な見方を示していた。
今月の最新の調査では、18~24歳の若者の間でより多くの支持がみられた。ハリー王子を肯定的に見る人と否定的に見る人の割合は、ほぼ半々だった。