2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月2日

 トルコ外交の失敗は他にも被害をもたらした。5月、レイハンリで死者51名を出すテロ事件があった。トルコは不安定な地域での安定した国として、投資も集まり経済も好調だったが、シリアの内戦争が続けば、トルコの経済も危うくなる。

 トルコは、シリアの崩壊に対処する軍事的手段を有しない。もし、シリアが崩壊すれば、化学兵器やミサイルの管理は危険にさらされるかもしれない。

 トルコはある意味で日本に似ている。日本はソフト・パワーの国であるが、自国の安全保障は米国のハード・パワーに依存している。日米安保条約があり、在日米軍基地、核の傘に頼っている。同様にトルコは、米国を必要としている。特にイランに対しては、米国のハード・パワーが必要である。トルコは最近、イランの核問題についても、米国寄りに態度を変えてきている。

 多くの日本人が米国の軍事プレゼンスに反対しても、日本は日米安全保障条約に頼っているように、AKPも世論を無視して米国と緊密な関係を持つようにすべきである。

 ソフト・パワーでは、トルコは、国際的立場を強くすることも安全を確保することも出来なかった。この地域の危機では、ハード・パワーが最も有益なことが分かった。シリアでの内戦は、トルコのソフト・パワー外交に試練を与え、トルコのやり方の欠点を明らかにした、と述べています。

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 この論説は現在トルコが直面している外交上の問題を良く描写しています。

 トルコは米・NATOから多少離れて中東地域で独自外交を展開し、影響力を強めようとし、それはかなり成功していました。しかし、シリア内戦の中でシリア反政府派を支援するなどした結果、イランとの関係もイラクとの関係も悪くなり、標榜していた「隣国との問題ゼロ」政策は頓挫しています。


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