2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月13日

 ロサンジェルス・タイムズ3月21日付で、米ワシントン近東政策研究所のSoner Cagaptay が、トルコは、2000年代に米国から離れて独自の外交を追求したが、最近はNATOの一員として行動しようとしており、中東で独自の地位と影響力を回復しつつある、と論じています。

 すなわち、2000年代には、トルコは西側から離れて独自のアイデンティティーを求めようとしたが、その結果、イランの圧力に対抗しようとしていたサウジなどのアラブ諸国にとって、トルコはあたかも「金持ちのイエメン」のような無意味な存在となり、トルコの権威も損なわれてしまった。

 しかし、その後トルコは、自らの存在意義は、米国およびNATOと近い関係を持つイスラム国だということにあると認識するに至っている。その象徴的な出来事は、NATOのミサイル防衛への参加だ。20世紀のNATO のアイデンティティーを規定したのは「冷戦」だったが、21世紀のNATO のアイデンティティーを規定するのはミサイル防衛だと言ってよい。

 また、シリア問題では、トルコは反イラン、親NATOの立場を取るようになった。今後、イスラエルとの和解――これには2010年のガザ事件に対するイスラエル側の謝罪が必要であるが――も期待される。そうなれば、トルコは中東で重きをなすことになろう、と言っています。

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 たしかに、米国のイラク戦争の評判が悪かった2000年代のトルコのポピュリスト的反米姿勢は、盧武鉉時代の韓国を想い出させるようなものでした。しかし、論説が指摘するように、最近のトルコの態度は変わって来ています。トルコが反米主義の「はしか」を卒業したということは、今後の中東情勢において、ポジティヴな現象であり、歓迎すべきでしょう。

 ただ、シリア介入は、アサド政権の固い決意の前には、失敗に終わる可能性が高いと思われます。失敗するならするで、NATOやスンニー派アラブとの連帯を更に固める形での結末が得られることが望まれます。


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