2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月4日

 政治論議が緊縮財政策から成長に代わり、7月にドイツが特別大臣会議を開催する際のテーマが、緊縮財政ではなく若者の失業問題になったのは良いことである。

 しかし、時間的余裕はない。ユーロ圏は、経済と政治の間の戦いの真っ只中にある。1年前は、国債市場が敵であった。しかし、今やユーロを脅かすのは、リベラルな秩序――欧州統合の全てがそれに支えられている――を破壊しようとするポピュリストたちである、と論じています。

 * * *

 ユーロ圏において、緊縮財政策は確かに必要でしたが、あまりに一律に厳しく行った結果、それに対する反動も激しいものがあります。イタリアではなかなか政権が発足できず、ギリシャなどでは頻繁にデモが起こっています。極右、極左が力を得、多くの政府が不安定です。これは、本論説でも指摘されるように、ユーロ圏外の英国ですら同じです。先の地方選挙ではEU離脱、反移民を政策とする英国独立党が大きく躍進し、親EUである連立政権のパートナー、自由民主党は無残なほどに票を失いました。英国では、反移民、反外国人運動には至っていませんが、若者の失業率が平均で24.4%(2013年4月)に達し、50%を超える国すらあるユーロ圏では、そうした動きが深刻になっています。

 卒業後全く職に就けない若者が増え、また、失業期間が長引くと、一生、安定した職に就けない可能性が高く、「失われた世代」が深刻な政治課題となっています。EU市民であれば、圏内では、どの国においても同等の労働条件で職を得られます。しかし、そうは言っても、例えば、ギリシャの青年がドイツに職を求めて移住するのは容易ではありません。

 ユーロ圏外の英国では、ユーロ圏からの失業者やEU内の貧困国からの労働者が増え、決してバラ色ではない労働市場を脅かし、EU財政への貢献額やEUが課すさまざまなルールへの不満と共に、反EU熱を煽っています。

 論説は、繁栄と安定を生むはずであった欧州統合が、ユーロ救済に優先順位を置き過ぎた結果、逆に社会不安を増幅し、ユーロばかりかEUを破壊する可能性があることを指摘しているわけです。今や、欧州社会はこうした論説が多々見られるほどに不安定になっています。

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