日本の構造改革の中には、女性、高齢者、移民の雇用増大が含まれようが、これはアメリカの方が進んでいる分野であり、特に女性の雇用は日本が改善すべき分野である。
二本目の矢である財政改善については、日本政府の借金は大きいが、借金が低成長の原因でなく、低成長が借金の原因であることを認識すべきである。
三番目の金融政策については、デフレの克服のためと理解しているが、そもそも、金融政策の効果は限定的である。為替の切り下げ競争となることに対しては、国際的調整が必要であろう。
さて、アメリカはアベノミクスのようなことが出来るだろうか。要はそのような総合的政策を打ち出せるかどうかであるが、アメリカでは政争が足を引っ張っている。要は、高成長と平等さを達成することにある。
過去の日本を失敗として見る人は、経済の成功というものを狭い視野で見ている。所得の平等化、長寿、失業率の低さ、優れた児童教育保健、そして労働力の量と比較しての生産性の高さなどは、米国より進んでいる。もしアベノミクスの成功が期待の半ばでしかないとしても、日本は多々米国に教えるところがある、と述べています。
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経済学の大御所による、目先の現象に捉われない、長期的総合的な観点からの、日本についての、積極的評価です。
アベノミクスについては、個々の政策というよりも、アメリカのように政争にとらわれず、総合的な政策を打ち出したことを評価する一方、過去の停滞の時期においても日本は優れた実績を残していると言って、全体として、日本経済を再評価しています。
確かに、20年余りの停滞の中にあっても、日本は世界に誇れる安定した豊かな社会を維持して来ました。それははからずも東日本大震災で世界の注目を引くことになりましたが、世界でも稀な、平等で、信頼関係の高い社会であることを示しました。
アベノミクスに世界が瞠目するにつれて、過去に日本が達成した成熟社会が見直されていると言って良いでしょう。
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