彼らが部屋に入ってきてこちらを見る。眼差しはやはり思ったとおりである。心境が読めると、交渉で次に彼らが何をいうか、口を開く前に大体予測できることになる。
日本企業の社員がこういう場合に優しすぎるというのは相手の気持ちを察してしまい、相手をたてたウィンウィンの解決策を考える傾向があるからである。意図的な権利侵害である模倣はほとんどが東アジア文化圏に属する国での現象である。それは書道で師匠の書いた朱文字の手本どおりに筆を運ぶのが習い事の基本である文化圏である。いいものを真似て何が悪い。
しかしウィンウィンの解決策と言えば聞こえはいいが相手のウィンはこちらのルーズでしかない。知財の権利行使は、一社に手加減するとそこに最恵待遇を与えたようになり、他の会社への権利行使は全て同じ条件にまで引き下げられる可能性がある。この場合は侵害の即時停止、侵害品の廃棄でしかない。知的財産権は独占を許される強力な権利であるが、侵害を許しライセンスを与えるのは将来のライバルを育てることに直結する。ライセンスは自社のビジネスへの影響をドライに計算してからであり、それは優しさとは別の次元でたんに仕事をきちんとするということである。
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