2024年12月22日(日)

喧嘩の作法

2013年7月12日

 権利侵害事件で相手方と直接交渉をして決着させることは企業の知財部門長にとって重要な仕事である。裁判までいかずに当事者同士の交渉で解決するのがほとんどのケースであり、交渉力の有無は大きな差となる。権利侵害の交渉は真正面から対立するタイプの交渉であり、結構ハードである。権利者にとっては侵害者を排除することが目的になり、侵害者はビジネスを失う可能性があるため必死で抵抗する。しかし交渉で圧倒的に有利なのは権利者側である。

 交渉は交渉学という分野もあるほど、さまざまなテクニックが学問にまでなっている。それはそれで知っておくべきである。自分で使うこともあるが、知っておくことにより相手の仕掛けの意図が分かりやすくなるため柔軟に対応できる。

問題ある
日本企業の対応

権利侵害の交渉は、真正面から対立することの多いハードなタイプの交渉だ (提供:アフロ)

 個々のテクニックは学ぶことができるが、交渉スタイルは交渉者の個性による。尊大で偉そうに振る舞うことによって威圧感をだせる人はそれが交渉スタイルになるし、論理的に冷たく追い詰めることができる人はそれがスタイルになる。一般的に日本企業はチームで交渉に臨むことが多く素直な交渉スタイルをとる。それでも勉強量が豊富で判断レベルが高い日本企業の社員は知財での外国企業との交渉では比較的有利に展開できることが多い。問題は相手を理解して、優しくしすぎる点である。自分が権利者として交渉に臨む場合は最初から優位なポジションに立っている。そういうときは余裕があるのでその傾向がさらに強くなる。

 あるとき中国の侵害者に対し、権利者として直接交渉をすることになった。場所は北京のホテルである。会議場所の部屋に「ホンダと合作の会議」という看板がでていた。秘密裡の会議のはずなのに彼らがホテルに頼んで用意させたものである。

 それを見ながら相手方の思いとして感じたのは、自分はホンダに憧れている、同じような技術を使ってみたい、だから技術を模倣=学んだだけなのだ、知財に触れることは分かっているがそれでも学ぼうという姿勢を許してくれるのではないか、うまくいけば今後は技術を学ばせてくれるのではないか、その先は提携という可能性もあるのではないか、今回の会議で自分がうまく合作=提携という話までもっていければ自分の会社にとって大きな転機になるはず。


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